- 著者
-
中村 彰男
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.133, no.3, pp.144-148, 2009 (Released:2009-03-13)
- 参考文献数
- 18
血管平滑筋の収縮は細胞内Ca2+の上昇に伴い,平滑筋ミオシン軽鎖キナーゼ(SmMLCK)が平滑筋ミオシンの制御軽鎖(MLc20)をリン酸化することにより引き起こされると考えられている.しかしながら,このリン酸化仮説は細胞内Ca2+の上昇を伴わないCa2+非依存性収縮やミオシンが脱リン酸化されているにもかかわらず収縮が維持されるなどこれまでのリン酸化仮説では説明できない多くの問題点を孕んでいる.これらの問題は血管病の薬物治療において一つの壁を作っている.この問題をブレイクスルーするきっかけとなったのはリコンビナントSmMLCKを用いた研究である.リコンビナントSmMLCKには従来のキナーゼ活性に着目した研究では見えてこなかった新たな制御機構の存在が次第に明らかになってきた.それはキナーゼ活性以外にもミオシンやアクチンに直接作用して平滑筋収縮を制御する機構である.このリン酸化によらない制御機構はSmMLCKの非キナーゼ活性と呼ばれる.ここではSmMLCKのもつ非キナーゼ活性に焦点を当てて紹介したい.