- 著者
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蒲原 聖可
- 出版者
- 一般社団法人 日本DOHaD学会
- 雑誌
- DOHaD研究 (ISSN:21872562)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.1, pp.6-25, 2021 (Released:2021-12-02)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)がパンデミック(世界的大流行)となり、効果的な予防法や治療法の確立が急がれている。妊婦での感染例も報告されており、妊娠・出産アウトカムに対するCOVID-19の影響が懸念されている。現時点では、国内発症の妊婦でのCOVID-19による死亡例は報告されていない。本邦では、妊婦中期の感染が多く、主な感染経路は家庭内感染である。当初、国内事例の妊婦患者では、重症化リスクは高くはない、とされていた。しかし、妊娠後期の妊婦ほど重症化しやすいとの報告もあった。現在、本邦でも「妊娠後期」は、「重症化のリスク因子」の一つとされている。
国外のデータを含むメタ解析では、COVID-19感染妊婦は、同年代のCOVID-19感染の非妊婦と比べると、ICU入院リスク、人工呼吸器管理リスク、死亡リスク、早産リスクが有意に高いとされた。妊婦での重症化リスク因子は、35歳以上、肥満(BMI30以上)、高血圧、糖尿病、喫煙である。胎児および新生児への影響に関して、まず、垂直感染の可能性は否定できない。一方、母乳を介した感染リスクは低く、母乳栄養が推奨される。
最新のCOVID-19診療の手引きでは、「妊婦がCOVID-19 に感染しやすいということはない」、「妊娠中に感染しても重症化率や死亡率は同年齢の女性と変わらない」、「妊娠初期・中期の感染で胎児に先天異常を起こすという報告もない」、「しかし,妊娠後期に感染すると,早産率が高まり,患者本人も一部は重症化する」とされている。
公衆衛生上のCOVID-19対策では、SARS-CoV-2感染予防として原因ウイルスへの暴露機会を減らすための啓発が行われている。一方、宿主となるヒトでの感染に対する抵抗力を高める、といった対策も重要である。ビタミン類やミネラル類の充足は、免疫能の維持に必須であり、抗ウイルス作用や抗炎症作用なども報告されている。さらに、サプリメントを用いた介入試験により、ウイルス性呼吸器感染症に対するリスク低減作用が報告されてきた。
本稿では、妊娠期におけるCOVID-19の影響を明らかにし、withコロナ時代における臨床栄養の視点から、妊婦での感染予防および軽症者の重症化予防のための機能性食品成分の臨床的意義を概説する。