- 著者
-
深瀬 徹
中村 有加里
- 出版者
- 動物臨床医学会
- 雑誌
- 動物臨床医学 (ISSN:13446991)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.10-14, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
- 参考文献数
- 10
2017年6月に東京都内の住宅地の民家において大型の昆虫の生息を認めた。3個体を捕獲して外部形態を観察した結果,本来はマダガスカルに生息するGromphadorhina属ゴキブリの雌1個体と雄2個体であった。これらの3個体を1年にわたって飼育し,2世代を得た。また,同年7月から本家屋の内部と外部に粘着シートを用いたゴキブリ駆除器を設置したところ,9月までに家屋内と屋外でそれぞれ4個体,計8個体を捕獲したが,それ以降は2019年12月に至るまで本種は認められなくなり,完全に駆除されたか,あるいは2017-2018年の冬期に低温のために死滅したことが示された。Gromphadorhina属ゴキブリは,日本においてペット用,または爬虫類等のペットの餌用として広く飼育および繁殖が行われており,そうした飼育場からの逸出あるいは意図的な遺棄があり,それがこの民家に侵入したものと推察した。熱帯に生息するゴキブリ類が日本に定着しうるかは明らかではないが,保温性の高い住環境にあっては,それらの食性を満たす餌が存在する場合には定着の可能性もあると考えるべきであり,外国産ゴキブリの逸走や遺棄を防止するための啓発が必要である。