- 著者
-
深瀬 徹
- 出版者
- 動物臨床医学会
- 雑誌
- 動物臨床医学 (ISSN:13446991)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.4, pp.103-107, 2007-12-20 (Released:2008-11-12)
- 参考文献数
- 5
2001年から2005年の期間に犬糸状虫症予防薬の不適切な投与を受けた犬5頭に犬糸状虫成虫の寄生が認められた。その要因を検討したところ,第1例は,2001年6月から8月にミルベマイシン オキシムの錠剤,11月と12月にモキシデクチンの錠剤の投与を受けたが,9月と10月には予防薬が投与されていなかった。また,第2例は,2001年9月から12月までイベルメクチンのチュアブル製剤が投与されたが,8月までは投薬が行われていなかった。この2例では,投薬期間が不適切であったために成虫の寄生を受けたと考えられた。一方,第3例では,2003年の6月から12月までイベルメクチンのチュアブル製剤が投与されていたが,この犬は8月と9月の投薬時に下痢を発症しており,消化管からの薬物の吸収が不良であったことが推察された。第4例は,2004年6月から12月までイベルメクチンのスポットオン用滴下式液剤が投与されたが、飼い主が犬の被毛を分けて投薬を行わなかったため,被毛から薬液が飛散し,十分な経皮吸収が行われなかったことが疑われた。第5例は,2005年6月から12月までモキシデクチンの錠剤が投与されたが,この間に犬の体サイズが著しく増加したにもかかわらず,6月の際の体重にもとづいて投薬を継続したため,必要な用量の有効成分が投与されなかったものである。犬糸状虫症予防薬を処方および投与する際には,以上のような種々の点について考慮し,加えてクライアントエデュケーションを十分に行うことが重要であると考えられた。