著者
大屋 友紀子 中村 眞須美 田畑 絵美 森園 亮 森 祥子 木室 ゆかり 堀川 悦夫
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.308-314, 2008 (Released:2008-07-14)
参考文献数
30
被引用文献数
12 11

目的:地域在住高齢者を対象とし,転倒,つまずき,ふらつきの既往の有無と下肢筋力測定を含む各種の易転倒性検査との関連性を分析することにより,易転倒性の新たな指標を模索し,より効果的な転倒予防の対策を検討する.方法:被験者は地域在住高齢者102名で,問診に加え,転倒リスクを評価する5つのパフォーマンステストを実施した.さらに,膝伸展筋力を測定し,時系列解析,周波数解析を行った.結果:転倒の既往を有する者(転倒群)は,非転倒群に比してつまずき(p<0.001),ふらつき(p=0.002)の既往歴がそれぞれ有意に多かった.周波数解析の結果では,転倒群では非転倒群に比して,有意に中心周波数が低く(p=0.025),より高周波成分が少ない波形(p=0.035)を示していた.また,時系列データの解析結果から,転倒群は非転倒群よりも最大筋力に至るピーク潜時が長かった.結論:転倒群は非転倒群に比して,膝伸展筋力のピークまでにより多くの時間を要し,筋力の発生の過程が緩やかであった.この結果は,転倒群は障害物回避行動などで転倒リスクが高いことを示しており,地域在住高齢者に対する新たな易転倒性の指標として有効と考えられる.転倒の予防対策として,最大筋力とともに筋の反応速度を高める運動が有用であることが示唆された.