著者
中村 祐理子
出版者
北海道大学留学生センター
雑誌
北海道大学留学生センター紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-36, 2002-12

本稿は中級学習者の受け身の誤用例を採集し、分析したものである。その結果、誤用の原因として以下のことが考察された。1)文体と受け身の不適切な関連 2)自動詞に関する不充分な理解 3)自動詞と他動詞の不充分な識別 4)利害性と受け身の主体の共起に関する不充分な理解 5)主語の省略における誤解と話者の視点の不統一 この考察を元に効果的な指導を行うために四つの留意点を示した。・受け身の主体における誤用の産出を避けるためには初級学習の段階から視点の概念を導入することが必要である。・文のねじれを回避させるためにテキストに基づいた主語の省略やテキスト内の話者の視点の統一に留意することを指導する。・文体に関連すると思われる受け身文、能動文の意味機能を考えて使い分けができるようにする。・等価の事象を叙述する他動詞受け身文と自動詞文の区別ができるように白動詞文の効果的な指導を行う。