著者
前川 ほのか 稗田 牧 中村 葉 小泉 範子 外園 千恵 木下 茂
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.60-65, 2017 (Released:2017-11-03)
参考文献数
13

【目的】近視を有する小学生におけるオルソケラトロジー(オルソ)の近視進行抑制効果と波面収差の関係性を検討する。【方法】対象は異なる3社のオルソレンズを装用した72例144眼である。2年間のレンズ装用後, 最低3週間レンズを外した。レンズ装用2年後の波面収差(角膜と眼球4mmのコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差)と装用前後の屈折度数, 眼軸長の変化量の相関関係を検討した。【結果】角膜の球面様収差と屈折度数変化量に正の相関を認めた(R=0.17, Pearson検定)。角膜と眼球のコマ様収差, 球面様収差, 球面収差, 全高次収差と眼軸長変化量に負の相関を認めた(R=-0.20, -0.24, -0.19, -0.23, -0.22, -0.23, -0.21, -0.23, Pearson検定)。【結論】近視を有する小学生において, オルソレンズ装用により, 角膜と眼球の高次収差が増加することで眼軸長の伸長が抑制され, 近視進行抑制効果を生じることが示唆された。
著者
上田 実 中村 葉子 岡田 正弘
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.61-71, 2008-05-31 (Released:2017-09-29)
参考文献数
46

植物の運動に関する研究は,ダーウィン以来の長い歴史を持つ研究である.我々は,多くの運動のなかで,特に植物の就眠運動と食虫植物ハエトリソウの捕虫運動の有機化学的研究を行ってきた.これまでに, 5種の植物から就眠運動をコントロールする就眠・覚醒物質が単離・構造決定された.これらの作用機構解明を目指し,機能性分子プローブを開発した.光学活性な就眠物質の両鏡像体を用いるエナンチオ・ディファレンシャル分子プローブ法によって,運動細胞膜画分に,就眠物質の立体化学を認識する膜タンパク質が存在することがわかった.また,ハエトリソウが虫を捕らえる運動は,捕虫葉にある感覚毛に30秒以内に2回の刺激を受ける必要があり,一回の刺激では決して運動は起こらない.これは高等植物の「記憶」現象とも言うべき現象である.最近,この「記憶」現象に関与する生理活性物質が発見された.「記憶」は,複数回の刺激によって活性物質が段階的に分泌されることで説明できると推定される.