著者
阿久津 敦子 大武 亜弓 中村 邦男
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.17, pp.142, 2005

<br>【目的】市販の鶏卵から取り出した卵白および卵黄について、一定の温度に急加熱したときの粘弾性率の時間発展(凝固曲線)および一定の昇温速度で加熱したときの粘弾性率の温度変化(温度分散)を測定し、卵黄および卵白のレオロジー特性におよぼす加熱時間・温度の影響を調べてきた。今回はゆで卵について、そのレオロジー特性におよぼす加熱時間・温度の影響を調べた結果について報告する。<BR>【方法】産卵後約一週間の市販の鶏卵を共試卵とし、室温に戻した後、所定の温度および時間で温浴加熱した。その後、直ちに流水で充分冷まし、目視によるテクスチャーの観察および粘弾性率の測定を行った。測定にはレオメトリックス社製RDA_II_型レオメータを用いた。<BR>【結果】25℃における生の卵黄は絶対弾性率が約7Pa(ω=6.28rad/s)、損失正接10程度の粘弾性液体である。90℃におけるゆで卵では、卵黄は凝固し、弾性率が10,000Pa、損失正接0.03程度の粘弾性固体に熱変性する。卵黄の凝固反応が生じる最低温度はほぼ58℃であった。他方、生の濃厚卵白は弾性率0.1Pa、損失正接0.3程度の柔らかいゲルであるが、液卵の場合、90℃における凝固曲線は強度、1Pa、10Paと2,000Pa程度の3段階の時間発展を示した。3段目の反応が硬いゆでた卵白に対応する反応であり、その最低温度が70℃付近にあった。50-65℃の温度範囲では弾性率が10Pa程度の柔らかい不透明なゆで卵白となる。したがって、温度範囲65>加熱温度>58では、柔らかい卵白に包まれた固まった卵黄をもつゆで卵が得られる。温度範囲58>加熱温度>50では、卵白中の卵黄は、生の状態に近いことが分かった。