著者
遠藤 穣治 矢野 光洋 鬼塚 敏男 中村 栄作 中村 都英 桑原 正知
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.421-424, 2009-04-25 (Released:2009-05-13)
参考文献数
5

【背景】われわれは低濃度大量浸潤局所麻酔(TLA)を用いた非全身麻酔下血管外科手術を80例以上経験した.【症例】対象は2003年 9 月から2008年 3 月の間,TLAを用いて血管外科手術を行った82例.麻酔法はTLAと局所麻酔,硬膜外麻酔,腰椎麻酔,静脈麻酔を組み合わせて行った.【結果】TLA併用麻酔下に施行した手術の内訳は下肢静脈瘤ストリッピング47例,末梢動脈系手術22例,大動脈内ステント内挿術 4 例,透析シャント作製 6 例,ペースメーカ埋込 2 例,感染透析グラフトのデブリドマン 1 例であった.TLAの使用方法はTLA単独35例,TLA併用47例であった.手術は安全に執り行われ,術死・入院死例はなく手術創感染もみられなかった.術中安静不良例のうち 3 例は大腿―膝窩バイパスをTLA単独で施行した例であった.いずれも静脈麻酔薬の持続注射を追加し,とくに合併症なく手術を終了できた.【結論】TLAはその簡便性・安全性・疼痛軽減の持続性といった観点より,末梢血管外科手術の麻酔法としても比較的有用であると考えられたが,TLA単独での手術は症例を選ぶべきであると考える.
著者
河野 文彰 和田 俊介 仙波 速見 水野 隆之 川越 勝也 清水 哲哉 中村 都英 鬼塚 敏男
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.71-75, 2012 (Released:2013-01-31)
参考文献数
19

症例は67歳,女性。頸部腫瘤と胸部異常陰影の精査のために当科に紹介となった。頸部超音波検査および頸部CT検査で,30mm大の頸部腫瘤を右内頸静脈の背面に認め,穿刺細胞診にて悪性(乳頭癌)と診断された。しかし甲状腺には明らかな異常病変を認めなかった。また患者は来院時より右の眼瞼下垂と瞼裂狭小を認めていた。甲状腺オカルト癌および頸部リンパ節転移と診断し甲状腺全摘出術と頸部リンパ節郭清術を施行した。頸部腫瘤は内頸静脈と右椎骨前筋群に浸潤を認め,さらに右迷走神経と右交感神経幹への浸潤も認めた。迷走神経は温存できたが,内頸静脈および交感神経幹は合併切除を余儀なくされた。術前に交感神経鎖浸潤を来たしHorner症候群を呈した興味あるまれな症例を経験したので報告した。