著者
中根 淳子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.3-19, 2008-12-20

フランセス・B・ホーキンス先生は、1941年、第二次世界大戦の戦局悪化により、カナダに一時帰国するが、その後、日本語に堪能であり幼児教育に精通していることから、カナダ聖公会からBritish Columbia州の日系人のために働くよう要請された。1942年2月にはBC州の日系人はすべて海岸線から100マイル以内の防衛地域からの退去を命じられ、多くの者が収容所に移送された。ホーキンス先生は、ポートアルバーニ、バンクーバーを経て、1942年から内陸部の日系人収容所タシメに派遣された。幼稚園の立ち上げなど、そこでの具体的な活動について、カナダ聖公会アーカイブの協力により入手した資料から調査した。これらは第1部に述べられている。 また、第2部には、ホーキンス先生が1959年の卒業生に贈った黒いスーツについて書かれている。卒業式に慣例で着用していた黒いスーツを準備できなかった学生のことを心に留めてホーキンス先生が贈ったスーツは、今も卒業生のもとで大切に保管されていた。スーツをめぐっておよそ50年前の卒業生とめぐり合い、その生き方にホーキンス先生を見るようであった。