著者
長谷中 崇志 高瀬 慎二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.101-108, 2014-12-20

本研究では、地域福祉計画の評価指標の開発にむけた基礎的分析として、A市における調査データを基に、ソーシャル・キャピタルと社会経済的地位(所得・学歴)を取り上げ、それらと身体的・精神的健康度や幸福度との関連を明らかにすることを目的とする。今回の分析では、健康の指標として、国内外の多くの先行研究において生命予後や日常生活動作能力(ADL)予後の予測妥当性が示されている「主観的健康感」に焦点をあてて検証した。その結果、以下の3点の知見が得られた。(1)ソーシャル・キャピタルの構成要素である「信頼」が健康と関連していること。(2)所得が多いほど、幸福感が高く、主観的な健康度も高く評定される傾向にあり、所得の格差が個人の幸福感や主観的な健康感にも影響している可能性が示唆されたこと。(3)学歴が長くなるほど、主観的な健康度は高くなるが、精神的疲労・ストレスも高くなる傾向にあること。
著者
野々垣 文成 Fumishige Nonogaki
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 = Nagoya Ryujo Junior College annual report of studies (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
no.37, pp.45-53, 2015

声楽の分野では演奏が全てである。その演奏の助けとして歌手とピアニストの為の演奏法の解釈、分析が必要であり重要となってくる。現在、声楽の分野ではそのような文献がまだ不十分である。特にその中でもドイツ歌曲の分野では世界で最も優れている詩人の作品に才能ある作曲家が曲をつけていることでも知られている。筆者自身ドイツ歌曲専門の歌手であるため、ドイツ語圏の最高の芸術作品であるドイツ歌曲の演奏法と解釈に注目している。
著者
鬢櫛 久美子 種市 淳子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.91-99, 2008-12-20

本稿では、2007年4月に公開した「紙芝居.ネット」の理念と概要について報告した。「紙芝居.ネット」は、日本独自の文化財であると同時に重要な保育教材でもある「紙芝居」の魅力と情報を発信し、紙芝居の魅力の発見と、教材・教具としての価値の再認識を促す事を目的とし、以下4点のコンセプトにそって制作された。1)「紙芝居」を通して子どもの文化を考える2)「紙芝居」というメディアを後世に残す3)「紙芝居」を通して共感の輪をつなぐ4)「紙芝居」というメディアを再構成する 公開後、マスコミ、保育・教育関係者、学術研究者を始め多方面からの反響を得る一方で、継続資金や運営基盤の整備などの課題も明確となっている。保育の現場のデジタル環境も進展しつつある中、伝統的な紙芝居を伝え残すこととあわせて、保育の本質にそうかたちで、現代に即した紙芝居のより良い活用を推進していくことが「紙芝居.ネット」のはたすべき役割だと考える。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.213-224, 2013-12-20

ここに翻訳されたのは、ラテン四大教父の一人であり、6世紀から7世紀初頭にかけて活躍した大グレゴリウス(教皇グレゴリウス1世)が執筆した『牧会規定』全体の序の部分と第1部である。 第1部は、11の章から構成されており、そこでは、人を指導し、教える立場にある牧会者(聖職者)を目指そうとする人は、それ相応の学と経験を積んでいることが必要であるとともに、上に立ちたいという欲求に駆られて軽率に志すべきではないことが再三論じられている。
著者
横井 志保
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.97-103, 2012-12-20

保育現場では、日常のごっこ遊びから、発表会等で披露する、劇やミュージカル、オペレッタといった、役になりきって表現することは盛んに行われている。しかし現状では、そのような身体的な表現活動に対しての評価尺度が明確に示されていないことで、活動への保育者の援助の視点が不明瞭な状態にあると指摘されている。 本研究では、8つのグループ全てが同じ作品を演じ、それを評価した。同一のシナリオ、歌、曲を、いかに工夫して演じ、アレンジを加え、それぞれのグループのオリジナルとするのかが試された。発表の後、自己評価と他者評価の両方をした。そこでの学生らの評価の観点を明らかにすることで、今後の表現活動における評価の対象を明確にすることができ、保育においては、子どもに対して的確な援助ができるようになる。また、演じる際(園における発表会等での指導においても)の適切な`見せるポイント'を掴んだ表現ができるようになると考える。 学生のオペレッタ発表の自己評価と他者評価の結果から、評価の観点として演技に集中し、他者評価より自己評価の方が、よりマイナス面を強調して評価することが明らかになった。また、技能に関する評価は肯定的な評価より、否定的や矯正的な評価の方が目立って多くなされる傾向にあることがわかった。
著者
村田 康常
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.43-64, 2018-12-20

本論文では、遊びを中心とする幼児の生活と成長過程のなかで言葉が生まれてくるプロセスの原初相を主題として、幼児の生活と成長のなかで言葉が発せられ交わされていく根源のところ、言葉がそこにおいて立ちあがってくる経験のなかで楽しさや喜びだけでなくさまざまな要因が働き合う幼児の世界の特徴を考察した。松居直が「言葉を楽しむ遊び感覚」と呼んだような幼児の躍動する感性のなかで言葉が生まれてくるとき、そこはさまざまな要因が働いており、研究者にとって広大な探求領域が開けている。その中から本論文では、「言葉を楽しむ遊び感覚」を生き生きと生じさせるような幼児の生活におけるいくつかの要因を取り上げた。これらの要因を論じるための手がかりとして、ピカートの「沈黙」、ハイデッガーの「世界内存在」やホワイトヘッドの「感じ」といった諸概念や、コッブの子どもの成長についての創造的進化の概念に基づいた理解、バージャーが提起した言葉に先立つ視覚イメージの原初性、イーガンらが示した教育における物語と想像力の重要性などの諸議論を渉猟しながら、子どもの生活と成長過程を通して言葉が生まれてくる原初的な経験を論究した。本論文では、この論究を通して、「言葉を楽しむ遊び感覚」をともないながら、自らの世界内存在の物語的な理解を子ども期に十分に内在化することの重要性を示し、結論として、抑圧された沈黙ではなく、活気づけられた沈黙こそ、保育・幼児教育の場の基本だという見解を提示した。
著者
野々垣 文成
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
no.39, pp.3-16, 2017-12-20

声楽の分野では演奏が全てである。その演奏の助けとして歌手とピアニストの為の演奏法の解釈、分析が必要であり重要となってくる。現在、声楽の分野ではそのような文献がまだ不十分である。特にその中でもドイツ歌曲の分野では世界で最も優れている詩人の作品に才能ある作曲家が曲をつけていることでも知られている。筆者自身ドイツ歌曲専門の歌手であるため、ドイツ語圏の最高の芸術作品であるドイツ歌曲の演奏法と解釈に注目している。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
no.41, pp.41-55, 2019-12-20

トマス・アクィナス(以下、アクィナスとする)は、古代ギリシアに遡源し、教父や中世の神学者にも大きな影響を与えることになる「枢要徳」についてどのように理解しているのだろうか。本論では、『神学大全』第II-I部における叙述を中心に考察をしていく。 徳とはそもそもいかなるものか、徳はどこに成立するのか、徳にはどのような分類が可能であるか、ということが検討された後に、知慮、節制、剛毅、正義という「枢要徳」についての考察がなされるとともに、信仰、希望、愛といういわゆる「対神徳」とも区別される。 アクィナスの枢要徳については、アリストテレス的な枠組の中で思索が進められているが、一方で、アウグスティヌスからの影響も小さくなく、とくに、徳を愛との関係で捉えることについては、修正が加えられながらも、アクィナスに大きな影響を及ぼしている。
著者
鈴木 裕子 Yuko Suzuki Nagoya Ryujyo (St. Mary's) College
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 = Nagoya Ryujo (St. Mary's) College annual report of studies (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.83-92, 2005-12-20

The purpose of this research is to investigate the meaning and effects of imitation in preschoolers' body expression. In our previous researches, we considered how preschool children create stories in a body expression play. Through these studies, it had been shown that imitation helps the development of the ability to create original expressions. We analyzed the cases and classified the patterns of imitation. Imitation of preschoolers during body expression could be divided in four patterns. (1) A child is seeking the chance and timing to begin moving. (2) A child enjoys mimicking some movement and, through it, communicating with other children. (3) A child is self-conscious of his movements and image. (4) A child is taking in an image or an idea of a movement new to him. It seems appropriate to not judge one of the four patterns as superior, but to understand that all four serve as a starting point for creative expression.
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.15-23, 2015-12-20

「書簡」186と「書簡」194は、いずれも416年から418年の間にかけてアウグスティヌスによって執筆された作品であり、両者とも、ペラギウス主義の問題点について扱っている。アウグスティヌスによれば、人間の本性は、原罪によって著しく損なわれ、救済されるためには、人間の自由意思は単独では何ら有効な働きをすることは不可能であり、神の恩恵が先立ち、また、神の恩恵が共に働くことによってはじめて、救済への道が開かれる。ペラギウス主義は、人間の自由意思の働きをきわめて肯定的に捉え、恩恵を、いわばその補助手段的に捉えることにより、人間の側からのみ自由を理解しようとしたが、そのために、創造主である神の領分を十分に取り扱うことができず、神の側から神の自由を考察することには失敗したと言える。
著者
菊地 伸二
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.63-69, 2014-12-20

アウグスティヌスは、「自由意思と恩恵」の問題について、ペラギウス(及びペラギウス主義者)との間で、20年近くにわたり論争を繰り広げた。それは、アウグスティヌスの逝去によって中途で幕切れとなるものであったが、この論争によって、彼は「自由意思と恩恵」の問題について思索を深めるとともに、この問題についての後世への影響は測り知れないものとなった。もっとも、アウグスティヌスが、この問題を思索しはじめたのは、司祭に叙任されてから間もなく、「パウロ書簡」を精読するようになってからであり、とくに『ローマの信徒への手紙選釈』では、「ローマの信徒への手紙」の大意を「律法と恩恵」に関する書物と位置づけ、その中で、人間がもつ自由意思と神からの恩恵の双方を重視しようとする見解を披歴している。その見解は、たしかに、『シンプリキアヌスへの返書』に見られるような「自由意思と恩恵」についての決定的な見解にまでは至っていないものの、人間の「信仰」に働く自由意思を重視しながら、自由意思と恩恵の双方を生かそうとする態度が見受けられるものであり、彼の「自由」理解の一断面を示すものとして重要な意味を有するものである。
著者
村田 康常
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.79-94, 2011-12-20

In several writings including The Aims of Education, Alfred North Whitehead develops his original philosophy of education, which we can call "a theory of the rhythm of education." This paper tries to show an important influence of Bergson's idea of "élan vital" on Whitehead's theory of the rhythm. According to Whitehead, the essence of the life consists in the creative impulse to realize a definite shape of novel value in the world. The realization of some actual value is a creation of a new harmony, and the process of the creation has its own rhythm. Whitehead gives a philosophical explanation to the rhythm of the life by referring to ideas borrowed from Bergson, "élan vital" and "its relapse to the matter." The process of education should be coincident with the rhythm of the life, which swings from the romance of "élan vital" to the generalized "wisdom" through the precision of knowledge and information. His theory of the rhythm, appearing as a rhythmic theory of the life in his early works of scientific philosophy, develops toward the ideas of the becoming process of organisms and of the creative advance of the world into novelty in his later works of "philosophy of organism." His theory of the rhythm of education takes a significant position in the developing process of his philosophy from its earlier scientific philosophy to its later metaphysical cosmology. It is the reason why his philosophy of education shows a widespread vision of the life, nature and human being.
著者
中根 淳子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.3-19, 2008-12-20

フランセス・B・ホーキンス先生は、1941年、第二次世界大戦の戦局悪化により、カナダに一時帰国するが、その後、日本語に堪能であり幼児教育に精通していることから、カナダ聖公会からBritish Columbia州の日系人のために働くよう要請された。1942年2月にはBC州の日系人はすべて海岸線から100マイル以内の防衛地域からの退去を命じられ、多くの者が収容所に移送された。ホーキンス先生は、ポートアルバーニ、バンクーバーを経て、1942年から内陸部の日系人収容所タシメに派遣された。幼稚園の立ち上げなど、そこでの具体的な活動について、カナダ聖公会アーカイブの協力により入手した資料から調査した。これらは第1部に述べられている。 また、第2部には、ホーキンス先生が1959年の卒業生に贈った黒いスーツについて書かれている。卒業式に慣例で着用していた黒いスーツを準備できなかった学生のことを心に留めてホーキンス先生が贈ったスーツは、今も卒業生のもとで大切に保管されていた。スーツをめぐっておよそ50年前の卒業生とめぐり合い、その生き方にホーキンス先生を見るようであった。
著者
飯田 和也 横川 聖 藤田 哲也
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.27-42, 2006-12-20

今回は施設実習を行なう実習生への意識調査を通して実習前と後の意識の違い、子どもへの援助のあり方、職員へのイメージ、反省会での関わり方を調査した。実習前の暗いイメージが実習後には明るくなっている。又、職員に対しても優しいとか温かいイメージに変化している。実習そのものでは、辛いという意識、けんかなどへの対応の不安を持っていた。しかし、自由記述では、施設への就職希望が見られた。また、実習を通して自分自身の生き方を見直している。実習から学習意欲を持った学生もみられた。大学での講義やオリエンテーションにて子どもへの具体的な対応や施設説明がより学生に理解できる内容の連携が求められる。施設の課題として実習生に対してさらに効果的な実習プログラムの見直しの必要がある。
著者
三好 禎之
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.131-143, 2005-12-20

今日の指定介護老人福祉施設(以下:施設)を利用する入居者の要介護度や認知度は総体的に高い傾向を示している。2002年、老人福祉施設協議会(老施協)が行った「特別養護老人ホーム運営概況調査」によると、施設入居者の平均要介護度は3.53度を示していた。この要介護度より入所者状況をみると、「寝たきり」の入居者は68.3%に及び、入居者の日常生活における自立度は低い傾向にある。本調査対象施設においても、2002年4月より2005年10月までの要介護度の平均を年度別にみると、2002年3.46度、2003年3.66度、2004年3.79度、2005年10月現在3.72度と推移し、要介護度は年々高い傾向となっている。以上のように、施設入居者の身体や精神の状態は、重度化している傾向にあると考えられる。こうした現状に対して、施設介護業務の提供時間や提供頻度は、主要介護業務を中心として部分的に増加していくことが予測できる。また入所者の要介護状態に併せて、介護業務の提供時間を見定めることや、介護業務の編成など状況に即した介護業務の確立は急務であるといえよう。取り分けて、夜間という時間帯は、限られた人員配置で行われており、1人の介護職員が提供する介護業務の時間や頻度は、これまで以上に増加傾向を示すと考えられる。これらのことから、本研究は、施設に勤務する介護職員の夜間介護業務実態を1分間のタイムスタディで持って観察し、夜間介護業務課題と夜勤者の主要介護業務を明らかにした。
著者
種市 淳子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1. 研究目的本研究は、短期大学図書館における利用者のOPACを用いた情報探索過程を調査し、得られた知見をもとに、実証的観点から現状のOPACの評価と改善策を検討することを目的とした。2. 研究方法(1)ログ分析と(2)検索実験を用いた。(1)ログ分析:2004年〜2007年の各年の6月1日〜7月31日におけるOPACアクセスログを採取して分析した。なお実験対象としたOPACには検索のアクセスポイントに目次情報が付加されていた。(2)検索実験:短期大学生44名を被験者に、課題を用いた検索実験を行った。その際、探索前に、検索に使用する「情報源」及び「キーワード」の明確化を促す群と促さない群を設定し、収集されたデータ(検索画面の操作履歴、ヘッドカメラの映像、利用された情報源、発話プロトコル)から行動比較と分析を行った。3. 研究成果調査の結果、以下の3点が明らかとなった。1) OPACで実行される検索語は下位語と自然語が多用される傾向にあり、目次にヒットする割合が高い、また検索語にフレーズを使用する割合が年々増加している。2) 検索インタフェースに使用される用語(例:件名、分類コード)の認知度は著しく低い傾向にある。3) 探索前に「キーワード」を明確にした群は、「キーワード」を明確にしなかった群と比較して、OPACの検索実行数及び収集された資料数により高い数値を示した。以上の結果から、現状のOPACシステムについて、目次情報による検索アクセスポイントは利用者アクセスを促進する効果が認められること、OPACのインタフェースでは、短期大学生の検索リテラシーを考慮し検索用語の表記や説明方法に改善を要する点があることが示された。また探索前に探索目標(「情報源」「キーワード」)を明確化させる行為は情報収集活動に影響を与えることが明らかとなった。