著者
中條 一夫
出版者
日本酒学研究会
雑誌
日本酒学ジャーナル (ISSN:2758142X)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.30-43, 2022 (Released:2022-12-20)

韓国の伝統こうじヌルクは多様な菌および酵母を繁殖させたものである。しかし、現在の韓国のマッコリ製品の中には日本由来の白こうじ菌を使用した製品がある。このため、韓国内には「韓国の国家無形文化財であるマッコリが日本の無形文化財と同一視されるのではないか」という懸念が存在する。この懸念を検証するため、「韓国のマッコリ製品の中に、日本の登録無形文化財『伝統的酒造り』の登録の要件を満たす製品が存在するか」を調査した。調査の結果、ソウル市内で調査した106点の中にはそのような製品は存在しなかった。本調査は全数調査ではないため、韓国内の懸念に根拠が認められないことが明らかになったとは言えないが、懸念する根拠は希薄であることが示された。このことは、日本と韓国の双方で自国の酒造り文化の無形文化としての保護がより円滑に行われ得ることを示唆する。 キ