- 著者
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森 啓
中森 享
- 出版者
- 東北大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1993
古生代の四放サンゴ及び中生代以降に知られる六放サンゴには、骨格外側にしわをきざんでいる種属がある。このしわは一般に成長輪と呼ばれ、日輪、月輪、年輪が知られている。このサンゴの成長輪によって、一年の日数は地質時代が若くなるにつれて少なくなってきた、という解釈が現在の定説となっている。本研究の目的は、この定説の基礎となっている日輪等を再検討することである。研究試料として第四系琉球層群産の単体サンゴTruncatoflabellum formosumと、群体サンゴTrachy-phyllia geoffroiを用い、SEMによって成長輪の幅、数を調べ、あわせて骨格の酸素安定同位体比によって年間成長率を測定した。T.farmosumの成長輪幅は0.05〜0.20mmで、年間成長率は3.0〜3.8mm(平均33mm)である。これは一年に平均24の成長輪が発達していることを示し、一つひとつの成長輪は日輪ではないと考えられる。一方T.geoffroiの成長輪幅は5〜20μmに集中し、年間成長率は二つのサンゴ体で、それぞれ4.0〜4.8mm、2.0〜3.1mmであった。この場合、成長輪を日輪とすると、年間成長率とよく符号する。またこの成長輪幅は他の研究で求められた日輪幅とほゞ一致している。四放サンゴの成長輪幅は50μmあるいはそれ以上で、六放サンゴの日輪幅よりかなり大きく、もしこれを日輪とすれば、年間成長率はきわめて高いものとなり、薄片等によって推定されてきた成長率と大きく異っている。以上の結果、(1)六放サンゴには2種類の成長輪が認められ、一つは日輪、もう一つは2週間に1つできる成長輪である。後者の幅は四放サンゴのそれにほゞ一致する。この事実は、従来の定説の基礎となった成長輪形成の基本的解釈に誤りがあると結論され、旧来の一年の日数の経年変化は再検討されるべきことを示している。