著者
中森 康浩 大澤 亨 二木 元典
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1-2, pp.21-24, 2017-06-20

[抄録] 今回,我々はオキシドールを浣腸し急性出血性大腸炎を発症した1例を経験した.症例は43歳男性.以前よりグリセリン浣腸を習慣的に使用していたが,今回誤ってオキシドールを浣腸し,その後より血便,腹痛,倦怠感を認めた.近医を受診し直腸炎の診断にて精査加療目的に当科紹介となる.大腸内視鏡にて直腸から連続する粘膜浮腫像,炎症像を認めた.CTでは直腸からS状結腸にかけて浮腫状の腫張及び周囲脂肪織の濃度上昇を認め,口側腸管との口径差を認めた.明かなfree air,腹水貯留は認められなかった.オキシドールの浣腸による急性出血性大腸炎の診断にて絶飲食,ステロイド注腸,点滴による保存的加療を開始した.発症4日目より飲水を開始.発症7日目の大腸内視鏡では炎症像が残存するも症状は消失しており,経口摂取開始後も症状再燃無く,発症14日目に退院となった.オキシドールは容易に入手できるが誤用により重篤な症状を呈するためその危険性を認識しておく必要があると考えられた.
著者
中森 康浩 安田 卓司 今本 治彦 加藤 寛章 岩間 密 白石 治 安田 篤 彭 英峰 新海 政幸 今野 元博 塩﨑 均
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.31-40, 2010-03-01
被引用文献数
2

[抄録] 高齢者が多く侵襲度の高い食道癌術後の誤嚥性肺炎は最も危険な合併症のひとつである.高齢者の誤嚥はサブスタンスP(SP)の分泌低下による咳嗽反射低下がその要因とされている.食道癌周術期における血中SP 濃度と咳反射の推移および誤嚥/肺炎の発症との関連を明らかにする.胸部食道癌手術予定で文書により同意が得られた26例を対象とした.術前,術後2日目(POD2),術後7日目(POD7)に血中SP 濃度測定,クエン酸誘発咳嗽反射閾値検査を行い,誤嚥/肺炎の発症との関連を前向き臨床研究で検討する.血中SP の平均値は術前,POD2,POD7の順に108.2pg/ml,66.8pg/ml,62.2pg/mlと推移しPOD2に大きく低下した.クエン酸誘発咳嗽反射閾値は測定可能の23例中19例(82.6%)でPOD2に閾値の上昇(15例)または最大のレベル10(4例)を示した.65歳以上のE群と65歳未満のY群に分けて検討したところ肺炎は3例(E群:2例,Y群:1例),不顕性誤嚥を2例(E群)に認め,全例POD2に咳嗽反射閾値の上昇をみた.E群の誤嚥/肺炎の4例はいずれも術前血中SP 濃度は40pg/ml以下でPOD2においても上昇をみなかった.食道癌術後の誤嚥/肺炎とのリスク因子を検討した結果,E群において術前の血中SP 濃度≦40pg/mlが最も有意なリスク因子と判明した(p=0.008).食道癌術後は血中SP 濃度の低下と咳嗽反射閾値の上昇により誤嚥性肺炎を容易に発症する状態にある.65歳以上で術前の血中SP 濃度≦40pg/mlは術後の誤嚥/肺炎に対するハイリスク群と考えられた.