著者
中森 康浩 安田 卓司 今本 治彦 加藤 寛章 岩間 密 白石 治 安田 篤 彭 英峰 新海 政幸 今野 元博 塩﨑 均
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical journal of Kinki University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.31-40, 2010-03-01
被引用文献数
2

[抄録] 高齢者が多く侵襲度の高い食道癌術後の誤嚥性肺炎は最も危険な合併症のひとつである.高齢者の誤嚥はサブスタンスP(SP)の分泌低下による咳嗽反射低下がその要因とされている.食道癌周術期における血中SP 濃度と咳反射の推移および誤嚥/肺炎の発症との関連を明らかにする.胸部食道癌手術予定で文書により同意が得られた26例を対象とした.術前,術後2日目(POD2),術後7日目(POD7)に血中SP 濃度測定,クエン酸誘発咳嗽反射閾値検査を行い,誤嚥/肺炎の発症との関連を前向き臨床研究で検討する.血中SP の平均値は術前,POD2,POD7の順に108.2pg/ml,66.8pg/ml,62.2pg/mlと推移しPOD2に大きく低下した.クエン酸誘発咳嗽反射閾値は測定可能の23例中19例(82.6%)でPOD2に閾値の上昇(15例)または最大のレベル10(4例)を示した.65歳以上のE群と65歳未満のY群に分けて検討したところ肺炎は3例(E群:2例,Y群:1例),不顕性誤嚥を2例(E群)に認め,全例POD2に咳嗽反射閾値の上昇をみた.E群の誤嚥/肺炎の4例はいずれも術前血中SP 濃度は40pg/ml以下でPOD2においても上昇をみなかった.食道癌術後の誤嚥/肺炎とのリスク因子を検討した結果,E群において術前の血中SP 濃度≦40pg/mlが最も有意なリスク因子と判明した(p=0.008).食道癌術後は血中SP 濃度の低下と咳嗽反射閾値の上昇により誤嚥性肺炎を容易に発症する状態にある.65歳以上で術前の血中SP 濃度≦40pg/mlは術後の誤嚥/肺炎に対するハイリスク群と考えられた.
著者
中居 卓也 白石 治 川辺 高史 船井 貞往 香山 仁志 康 謙三 安富 正幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.2674-2678, 1999-12-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

症例は56歳の女性.発熱と腹痛を主訴に来院した.前医で,下部胆管癌に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が今永式(I型再建法)で再建され,術後繰り返す胆管炎と肝膿瘍に膿瘍ドレナージが行われていた.血清ALPなどの胆道酵素や上部消化管造影検査では異常を認めず,^<99m>Tc-PMT胆道シンチグラフィーからも胆管空腸の吻合部狭窄や胆汁うっ滞所見はなかった.食事摂取で発熱などの胆管炎症状が現れ,抗生剤動注療法も奏効しなかった.胆管炎の原因が食物の胆道内への逆流と考えられ再開腹後,再建法をI型からII型に変更した.術後,6か月経過した現在,胆管炎の再燃は認めない.