著者
中泉 行正
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.19, no.8, pp.1057-1063, 1965-08-15

世にシーボルト事件として医師土生玄碩及天文方高橋作左衛門両氏に関する事件は有名なものである。たまたま医史学会長小川鼎三博士が見えられ、談シーボルト事件の二三の事に及び、呉秀三先生の名著「シーボルト先生其生涯及功業」という大冊を見ていた処、当所所蔵の前記土生、高橋両氏等の裁判の判決即当時の申渡書の記載が異なる点があり、又必ずしも全文をつたえていないという事に気付き、当所所蔵の天保元年(一八三〇)庚寅六月に下山要人氏により書かれた実秘録と題する申渡書文書と相違がある為にこれを充分に解読せんとしたが、仲々難解な為、医史学会同人中最も故実に通ずる羽倉敬尚翁をわずらわす事となり同氏の研究解読により次にかかぐる様になつた。これが本文の成立で呉先生の御本との比較等は末尾に付記しておいた。研学の方は本書を通読されると共に必ず呉先生の本をも併読される事をお願いする。