- 著者
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中津 賞
- 出版者
- 日本野生動物医学会
- 雑誌
- 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.97-102, 2011-09-30 (Released:2018-07-26)
- 参考文献数
- 2
大阪の一動物病院に来院する外国産野生動物について詳細に分析した。2005年9月1日から2009年8月31日までの4年間に来院した新患動物数から検討した。新患動物総数 20,987頭で,エキゾチックスは14,855頭であった。9,152頭がペット用に繁殖された動物と看做された。残りの5,703頭(27.1%)が野生由来の疑いのある動物であった。 この調査の結果,日本では各人が好む動物を世界中から輸入し,飼育できる実態がよく現されていた。いったん輸入された鳥は原産地に送り返されることもなく,また繁殖された個体が現地に戻されて個体数の回復に寄与することも皆無であることを考えると,こうした生命が消費されていることに注目する必要がある。 バラ苗などの輸入時には,土壌は一切持ち込みが認められないので,根は洗浄される。土壌中のあるゆる微生物群の日本への侵入を拒否している。動物は体内に多数で,複雑な,細菌をはじめとする微生物叢を保有して健康を保っている。これらの無数ともいえる生物群を同時に日本に輸入していることには無頓着であるのに驚かされる。ペットとして飼育する動物はいわゆる古典的なペット,例えば,犬,猫,鳥ではブンチョウ,セキセイインコ,ジュウシマツなどの数百年に渡ってペット化されて維持されている種が飼いやすく,ペットとして最適の動物であるので,外国産野生動物に代わってこれら古典的ペットの飼育に留めればと思う。