著者
今野紀雄 小張 泰弘 建部 英輔 中浜 清志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1-10, 1990-12-15

楽曲の音高列に対する時系列解析の一つの手法として 従来「定常性」をアプリオリに仮定した上でAR(自己回帰)モデル等に適用する方法があった.しかし 楽曲の音高列が「定常」であるかどうか一般にはわからないので その「定常性」について検討を加えるのはごく自然なことであると思われる.本研究ではまず厳密な意味での「定常性」の定義を述べ ここでの「定常性」を特に「局所弱定常性」と名付ける.そして 新しい確率論の理論であるKM_2O-ランジュヴァン方程式理論を用いて「局所弱定常性」の検定を行い 日本の歌謡曲の音高列に対して「局所弱定常性」の仮定が妥当であるかどうかを検討する.その後に「局所弱定常」であると見なされた曲に対し ARモデルを拡張したこのKM_2O-ランジュヴァン方程式理論から計算された幾つかの基本特性量を用いることにより新しい結果を導く.特に「多重マルコフ性」(音楽分析の文脈では楽曲の「記憶の効果」とも呼べよう)と密接な関係にある特徴パラメータのデルタと 各時刻ごとに分散が異なりうるノイズ(KM_2O-ランジュヴァン力)は従来の時系列解析では得られなかった新たな解釈をもたらす.