著者
中溝 一恵
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.61-72, 2006

江戸時代の錦絵などに木琴が描かれていた。歌舞伎の演目『天竺徳兵衛韓噺』で木琴が舞台上で奏された場面に始まり、ほぼ19世紀を通じて描かれ続けた。描かれた木琴の中には現在の木琴に存在しない部品が描かれている場合があり、どのように解釈すべきかという点に絞って検証した結果、当時のインドネシアのガンバンと呼ばれる木琴に同様の部品が付けられていたことが判明した。描かれた木琴とガンバンは構造上も際立った類似性を持つ。18世紀末の資料にオランダ人と木琴の関係に触れた記述が既に見られることから、描かれた木琴はオランダの植民地インドネシアのガンバンを模したものである可能性が高い。従来日本の木琴は中国に由来するとされており、描かれた木琴と中国由来の木琴に関する課題が浮かび上がってきた。