著者
中溝 宗永
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.117, no.2, pp.81-85, 2014-02-20 (Released:2014-03-20)
参考文献数
16

頸部郭清術は, 頭頸部癌を主とした頸部リンパ節転移を制御する手術で, “頭頸部がん専門医” にとっては必須で基本の手術術式である. 既に100年以上もの歴史があり, この間にさまざまな変法や術式名称が生まれた. 現在は全頸部郭清術を基本型とし, 肩甲舌骨筋上頸部郭清や側頸部郭清などを主とする選択的頸部郭清術が頻繁に行われている. 頸部郭清術では, 頸部筋間の脂肪組織に存在する転移リンパ節を, その連続性を保持して一塊に切除する. メス, 剪刃, 電気メスなどでの切離だけでなく, 結紮や止血, 縫合など, 種々の基本的外科手技が不可欠であるため, 使用する器械の機能や使用法に習熟し, 頸部臓器・組織の解剖学的構造を熟知して, 各所において適切かつ確実な手技を行うことが要求される. 選択的頸部郭清術を行うことで, 全頸部郭清術よりも郭清領域を狭めても, 決められた領域のリンパ節群は残すことなく確実に郭清し, 治療成績を低下させないようにする. 一方, 術後の機能障害や変形の軽減化を目指し, 重要な脈管と神経など温存する臓器とその周囲を確実に処理する. 温存する臓器・組織が多い選択的な術式は, ワーキングスペースと視野が狭く, 手術に慣れるまでは操作が難しい. したがって, 根治的郭清術を十分経験した後に選択的頸部郭清術を行うのが望ましい.本稿では,内頸静脈と副神経を温存してレベルI~IVを郭清する選択的郭清術の手順を記載し,筆者が考える器械の使用法や手技上のコツについて述べるので,参考になれば幸いである.