著者
中澤 慧
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.95-102, 2019-09-26 (Released:2020-08-01)
参考文献数
25

心肺蘇生時に患者の家族の立ち会いを許可する試みは、家族の要望に応じるかたちで1982年にアメリカで初めて実施された。立ち会いを経験した家族や医療者への意識調査をもとにして議論がかわされ、欧米では心肺蘇生時の立ち会いに関して家族に選択の機会を与えることがガイドラインで支持されるようになったが、家族の立ち会いを正当化する倫理的な根拠については十分に検討されてこなかった。本稿では、心肺蘇生を受けている患者が事前指示を残していない場合、家族の立ち会いをめぐって、代理意思決定の基準に依拠して議論することの是非について検討する。結論として、代理意思決定の基準ではなく、情報開示の基準に則って家族の立ち会いが議論されるのが妥当であることを論じる。立ち会いで家族が目の当たりにする患者の様子は、患者の病状に関する情報の一部であり、家族の求めがあれば、情報開示の一環として立ち会いは許可されるべきである。