著者
名越 澄子 中澤 晶子
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.1-7, 2010 (Released:2010-01-07)
参考文献数
9

女性医師が医師として社会的使命を遂行するには,チーム主治医制導入を中心とする新たな勤務体制の推進や育児支援,再就職支援などの社会的な支援策が必要となる.昨今,行政および各医学会や医師会を中心にさまざまな取り組みが進められているが,その実現にはすべての医師における過酷な労働環境の改善が前提となろう.一方,女性医師もその使命を自覚し,出産·育児の体験をも生かして,社会貢献できる医師へと自らを向上させる努力を怠ってはならない.さらに,指導的立場にある医師は,若い世代においてワーク·ライフ·バランスが重視されつつあることを認識し,女性医師を正当に評価して夢を与え,その成長を支援することが現代では必須要件となる.
著者
中澤 晶子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.557-572, 2001-11-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
102
被引用文献数
1 1

私は共同研究者と共に, ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ遺伝子を特異的に破壊し, 欠損株は胃内に定着できないことを, ヌードマウス感染モデルを用いて証明した。また本菌が尿素走化性と炭酸水素イオン走化性を持つこと, 運動は粘液中で亢進すること, 粘液中での運動にはウレアーゼが必要であることを明らかにした。さらにウレアーゼオペロンの転写産物解析により, 酵素活性化の最終段階で働く蛋白遺伝子mRNAが, 中性で分解され酸性で安定化されることを明らかにした。これらの成績から私は, ヘリコバクター・ピロリの持続感染機構として, 胃粘膜細胞表層の中性領域で分裂したウレアーゼ活性が低い細菌が, 粘膜表層から遊離し胃酸に曝露されると, ウレアーゼが活性化されて酸を中和できること, 粘液層の細菌は, 尿素走化性と炭酸水素イオン走化性によって粘膜表層に回帰し, 再び分裂するというライフサイクルモデルを提唱した。