著者
中瀬 悠太
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

ネジレバネの中で最も多様化しており宿主の情報も揃っているグループであるハナバチネジレバネについて、日本産種を中心に、ヒメハナバチに寄生するStylops属のネジレバネとコハナバチに寄生するHalictoxenos属とEustylops属のネジレバネについて分子系統解析を行った。その結果、liハナバチネジレバネ属とヒメハナバチネジレバネ属それぞれの単系統性が強く支持され、それぞれの系統上で多様化が独立に進行したことが明らかになった。また、分子と形態双方の情報よりネジレバネの新しい種の概念を提示し、コハナバチネジレパネ属は単独性コハナバチよりも真社会性コハナバチをより高い確率で宿主としており、しかも宿主特異性がきわめて高いことを示した。また、ネジレバネによる宿主の訪花行動の操作を検出するために、本研究では寄生されたハナバチの変化と訪花植物の送粉者への報酬に注目し、調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは生殖能力を失い営巣しなくなるため、幼虫の餌として花粉を集める必要がなくなり花粉に対する需要が変化する。またエゾアジサイはハナバチを中心に様々な昆虫が訪花するが、花粉のみを送粉者への報酬として提供しており、蜜を出さない。花蜜と花粉を出すトリアシショウマと、花粉のみを出すエゾアジサイが同時期に同所的に開花している場所で、どちらの花にも頻繁に訪花し、かつネジレバネの寄生がみられたニジイロコハナバチに特に注目し、7月に長野県小谷村周辺で調査を行った。ネジレバネに寄生されたハナバチは通常のハナバチと同様にエゾアジサイの花に訪花するが、花の上での行動は変化しており、寄生されたハチは花の上で採餌も集粉も行なわずネジレバネの1齢幼虫を放出するような行動を行なっていることを明らかにした。これらの研究成果は宿主とネジレバネの寄生系の実体の解明につながる重要なものである