著者
中田 一志 Nakata Hitoshi
出版者
大阪大学大学院言語文化研究科日本語・日本文化専攻
雑誌
日本語・日本文化研究 = Studies in Japanese language and culture (ISSN:09182233)
巻号頁・発行日
no.29, pp.1-16, 2019-12

複合接続助詞「のだから」については, これまで根拠付けに相手に対する「非難がましさ」や「当然性」といった含意が指摘されてきた。先行研究の指摘を頼りに, 「非難」に関わる条件を精査し,この形式が持つ「積極性」を確認し, 「積極性」と「当然性」を生み出す仕組みについて仮説を立てる。それは, 「のだから」節が表す内容のあるものとaが,それを一要素とする集合を喚起し,その要素すべてについての含意命題の中からaについての含意命題を取り立て,それを根拠とするという仮説である。仮説を証明するために,この形式によって集合解釈を受けることを立証する。結果,この形式には特立性解釈と既定性解釈があり,いずれも集合解釈から説明できることを実証的に検証する。
著者
中田 節子 中田 一志
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究は、因果関係を表す構文について、日本語と英語のような西欧語との意味論的統語論的類似性と相違性を明らかにすることを目指している。特に、条件文に焦点をおいて研究を行った。なぜなら、条件文は、どの言語においても、その言語の構造的特徴を反映した特異な現象を示すからである。多くの条件文に関する意味論的研究は、西欧語の統語的特性に根ざした研究である。そこでは、realisとirrealisの問の対立が文法の中に表されている。それゆえ、反事実的条件文の扱いが長く議論されてきた。それに対し、日本語には、条件節あるいは帰結節の命題が偽であること、すなわち、反事実性の明示的なマーカーはない。この研究をとおして、われわれは、日本語の条件文のきわめて重要な特性を明らかにした。そのうち、二点をとりあげる。一つめは、日本語では、条件節命題の真偽が定まっている(settled)であることを文法的にマークする。西欧語のように、命題の偽あるいは命題成立に関する高い仮定性を文法的にマークすることはない。二つめは、日本語では、話し手が、条件節命題の真偽を知らないことを文法的にマークする。西欧語のように、条件節命題の偽を話し手が知っていることを文法的にマークするのではない。われわれは、このような日本語条件文の意味論的特性をKratzer流の様相意味論の枠組みで説明することを提案した。残された問題もあるが、目指したことの多くを達成できたと考えている。以下に研究成果の公表のための活動を要約する。1 平成17年に、成果の一部を国際学会等で発表した。特に、有田は、京都大学で開催された国際ウークショップ「Language under Uncertainty : Modals, Evidentials, and Conditionals」で口頭発表を行った。また、平成18年に、ロンドン大学SOASで開催された、国際ワークショップ「Revisiting Japanese Modality」で口頭発表を行った。2 平成18年には、成果の一部が出版された。特に、有田は、様相意味論の枠組みを援用した英語と日本語の条件文の対照的研究が、『条件表現の対照』(益岡隆志編、くろしお出版)の一つの章して公表した。また、有田は、日本語条件文の時制とモダリティに関する研究を単著『日本語条件文と時制節性』として出版した。