著者
田中 美保子 中田 勝彦 高瀬 謙二 三田 四郎
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.191-198, 1991
被引用文献数
6

(4R)-hexahydro-7,7-dimethyl-6-oxa-1,2,5-dithiazocine-4-carboxylic acid(SA3443)のacetaminophen誘発肝障害に対する作用をBALB/cマウスを用いて検討した.SA3443(30~300mg/kg,p.o.)はacetaminophen(150mg/kg)投与により上昇した血清GOT,GPT活性と共に肝の病理組織学的変化を用量依存的に抑制し,また,acetaminophen(350mg/kg)による急性肝不全死に対しても同用量で抑制した.このBALB/cマウスの急性肝不全死モデルに対して,他の肝疾患治療薬であるcianidanol(500mg/kg),malotilate(100mg/kg),glycyrrhizine(10mg/kg)およびcystein(300mg/kg)も同様に抑制した.一方,SA3443は正常マウスの肝GSH量に対して何等影響を与えなかったが,acetaminophen投与による肝GSH量の低下を用量依存的に抑制した.以上の結果より,新規環状ジスルフィド化合物SA3443はacetaminophen誘発肝障害に対して明らかな防御作用を有することが示され,その作用機序の1つに肝のGSH低下の抑制が示唆された.