著者
中田 奈月
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.41-51, 2004
被引用文献数
1 1

近年, 女性しか従事しないと考えられてきた保育職に参入する男性が増加している。男性保育者の存在は我々がイメージしてきた「保育者」像を大きくゆるがす。そのため女性保育者や保育所所長は彼らを不必要だと考えたり矛盾した期待をしたりする。そんななかで男性保育者は周囲の人々の期待にどうこたえ男性保育者であり続けるのか。男性保育者の経験に伴って変化する男性保育者自身の「保育者」定義に着目して分析する。分析の結果, 男性保育者の「保育者」定義にはシークエンスがあり, そこには3段階あると分かった。それらの定義は, 優しく世話好きでケア労働を好むといった従来の「保育者」定義とは大きく異なる。第1段階, 彼らは自らを保育所の父と定義する。第2段階, ある程度経験をつんだ男性は, ジェンダーの偏りを是正する者として男性の視点を取り入れようとする。そして第3段階, かなり経験をつんだ男性は, 子どもの発達を促す者として保育をしていた。