著者
石橋 敏光 安田 是和 落合 聖二 中田 雅敏 秋元 明彦 岡田 創 近藤 恵 服部 照夫 柏井 昭良 金澤 暁太郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.2124-2128, 1990-08-01
被引用文献数
5

転移性肝腫瘍ではまれな門脈内腫瘍塞栓の2例を経験し,これに対し肝切除術を行ったので報告する.症例1は28歳の女性で卵巣のembryonal carcinomaの肝転移であった.肝右葉に巨大な多発肝転移があり,右門脈起始部より1次分枝に及ぶ腫瘍塞栓を認めた.拡大肝右葉切除術を行ったが術後2か月で残肝再発を来し死亡した.症例2は61歳の男性でS状結腸癌の肝転移であった.肝左葉に孤立性肝転移があり,左門脈起始部より1次分枝に及ぶ腫瘍塞栓を認めた.肝左葉切除術を行ったが術後11か月で残肝再発を来し死亡した.門脈内腫瘍塞栓を伴った転移性肝腫瘍は,腫瘍塞栓を含めた肝切除術にもかかわらず予後不良で,肝切除に加え残肝再発に備えた術前,術後の積極的な集学的治療が必要と考えられた.