- 著者
-
中道 貞子
- 出版者
- 一般社団法人 日本生物教育学会
- 雑誌
- 生物教育 (ISSN:0287119X)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.3, pp.150-159, 2020 (Released:2020-12-18)
- 参考文献数
- 6
2018年3月,次期高等学校学習指導要領が告示され,今回初めて,『生物基礎』の内容の取扱いの配慮事項として,主要な概念を理解させるための指導において重要となる用語(重要用語)の数が具体的に示された.その数は,2017年9月に出された日本学術会議基礎生物学委員会・総合生物学委員会合同生物科学分科会生物科学分野教育用語検討小委員会の報告「高等学校の生物教育における重要用語の選定について」の中に示された『生物基礎』の最重要用語と重要用語の合計数153の1.5倍程度である.なお,2019年7月に同小委員会から改訂版が出されたが,『生物基礎』の最重要用語・重要用語に該当すると思われる用語は157である.一方,現行学習指導要領のもとで,5社の教科書出版社から刊行されている『生物基礎』の教科書のいずれかに掲載されている生物用語は520語である.これに,小委員会報告に見られる11語を加えた531語を高校生物教員に示し,その中でどれを『生物基礎』の重要用語と考えるかを調べる目的で,2018年8月から2019年3月の間にアンケート調査を実施し,80名の高校生物教員から回答を得た.回答者によって選ばれた『生物基礎』の重要用語は,小委員会報告改訂版で選ばれた最重要用語・重要用語と概ね一致していた.ある用語を重要とした回答者の割合(その用語の被選択率)が76%以上だった用語は96語で,そのうち93語(97%)が小委員会報告の最重要用語・重要用語であったが,被選択率が低い用語には小委員会報告の最重要用語・重要用語が少なかった.また,被選択率の高い用語の多くは,次期学習指導要領の『生物基礎』の解説に見られる生物用語であった.次期学習指導要領解説で示された『生物基礎』の重要用語数の目安は200~250なので,小委員会報告や次期学習指導要領で取り上げられた生物用語だけでなく,教科書では,さらに生物用語が付け加えられる可能性がある.用語選択の際には,学習内容の概念の階層化を図り,学習内容を俯瞰した上で用語選択するのがよいと考え,本報告では,次期学習指導要領の大項目の一つについて,その例も示した.