著者
伊藤 一輔 斎藤 克治 中里 京 甲谷 哲郎 北畠 顕
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.201-206, 1996-02-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
12

家庭血圧計の使用実態を調査した。ついで家庭血圧測定に伴う臨床的問題点のうち, 家庭血圧計の種類別での精度と医師測定血圧値と家庭血圧値の比較を検討した。家庭血圧計の実態調査は, 高血圧外来通院者172名中家庭血圧計を所持していた137名 (所持率80%) で行った。血圧計の種類は上腕用が約9割をしめた。使用動機は自分で血圧値を知りたいが約半数, 医師の勧め30%の順で, 測定頻度は毎日定期的が約半数, 症状のある時が約20%であった。測定時間帯は起床後~朝食前が約4割, 就寝前と朝食後~昼食前が約3割であった。家庭血圧値と医師測定血圧値の比較では, ほぼ等しいが約半数のみで, 外来血圧値の方が高いが35%, 家庭血圧の方が高いが18%であった。家庭血圧への信頼と有用性は, 極めて高かった。つぎに, 家庭血圧計の精度を上腕用, 手首用, 指用でダブルステソスコープ法にて英国高血圧学会の基準で41名で検討した。その結果, 上腕用は基準をクリアーしたが, 指用と手首用はクリアーできなかった。最後に高血圧患者20名で, 医師測定血圧値と家庭血圧値の比較を, 治験薬投薬後2週毎に8週間で検討した。その結果, 両者がほぼ等しいのは30%であり, 医師測定血圧値が常に高い例と当初医師測定血'圧値が高いが経過により等しくなる例が, 共に35%あった。以上より, 血圧値の判断には, 医師測定血圧に加えて家庭血圧値を参考にすることが重要と考えられたが, 家庭血圧測定にあたっては, きちんとした家庭血圧計の使用法の指導が必要と考えられた。