著者
髙橋 雅之 表 和徳 相川 忠夫 浅川 響子 檀浦 裕 小松 義和 相馬 孝光 岩切 直樹 牧野 隆雄 甲谷 哲郎 加藤 法喜
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.723-729, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
13

症例は65歳男性. 2012年8月, 意識消失し自宅階段から転落, 家族により救急要請. 救急車内で無脈性心室頻拍 (ventricular tachycardia ; VT) および心室細動を認め, 不整脈原性の意識消失が疑われ当院搬入となった. 搬入時, モニター心電図はwide QRSとnarrow QRSが入り乱れた異常波形を示していた. 12誘導心電図で下壁誘導のST上昇, 心臓超音波検査所見で壁運動低下を下壁に認めたため急性冠症候群を疑い, 冠動脈造影を施行したところ, 右冠動脈#2 : 100%の所見にて引き続き経皮的冠動脈インターベンション施行し血行再建に成功した. しかし冠疾患集中治療室入床後に血圧低下を伴うサインカーブ様の非持続性VTが散見され, まもなく無脈性VTとなり, 電気的除細動にて自己心拍再開を得た. アミオダロン持続静注を開始したが, 最終的に無脈性VTが頻発し電気的除細動による停止効果も得られなくなり, 循環動態の破綻をきたしたため, 経皮的心肺補助装置を留置した. その後, 透析患者にもかかわらず塩酸ピルシカイニド75mg/日の服用が判明し, 血中濃度高値が予想されたため, 持続的血液濾過透析も開始した. 翌日には洞調律となり循環動態も安定した. VT stormをきたした塩酸ピルシカイニド中毒について, 文献的考察を含めて報告する.
著者
伊藤 一輔 斎藤 克治 中里 京 甲谷 哲郎 北畠 顕
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.201-206, 1996-02-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
12

家庭血圧計の使用実態を調査した。ついで家庭血圧測定に伴う臨床的問題点のうち, 家庭血圧計の種類別での精度と医師測定血圧値と家庭血圧値の比較を検討した。家庭血圧計の実態調査は, 高血圧外来通院者172名中家庭血圧計を所持していた137名 (所持率80%) で行った。血圧計の種類は上腕用が約9割をしめた。使用動機は自分で血圧値を知りたいが約半数, 医師の勧め30%の順で, 測定頻度は毎日定期的が約半数, 症状のある時が約20%であった。測定時間帯は起床後~朝食前が約4割, 就寝前と朝食後~昼食前が約3割であった。家庭血圧値と医師測定血圧値の比較では, ほぼ等しいが約半数のみで, 外来血圧値の方が高いが35%, 家庭血圧の方が高いが18%であった。家庭血圧への信頼と有用性は, 極めて高かった。つぎに, 家庭血圧計の精度を上腕用, 手首用, 指用でダブルステソスコープ法にて英国高血圧学会の基準で41名で検討した。その結果, 上腕用は基準をクリアーしたが, 指用と手首用はクリアーできなかった。最後に高血圧患者20名で, 医師測定血圧値と家庭血圧値の比較を, 治験薬投薬後2週毎に8週間で検討した。その結果, 両者がほぼ等しいのは30%であり, 医師測定血圧値が常に高い例と当初医師測定血'圧値が高いが経過により等しくなる例が, 共に35%あった。以上より, 血圧値の判断には, 医師測定血圧に加えて家庭血圧値を参考にすることが重要と考えられたが, 家庭血圧測定にあたっては, きちんとした家庭血圧計の使用法の指導が必要と考えられた。
著者
横田 美紀 竹内 淳 永井 聡 安藤 康博 川嶋 望 宮本 憲行 甲谷 哲郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.105-113, 2016-02-29 (Released:2016-02-29)
参考文献数
28

糖尿病患者においては冠動脈疾患の合併頻度が高く,生命予後を左右するために,早期の的確な診断が期待される.糖尿病では無症候性心筋虚血のために自覚症状が乏しく,診断時に高度に進行した病変を示す患者も少なくない.今回,我々は,合併症の精査目的に入院をした159例の無症候性糖尿病患者に対して320列冠動脈CTによる冠動脈疾患のスクリーニングを実施した.その結果,67例(42 %)に有意狭窄を認め,循環器内科医による追加検査によって20例(13 %)が虚血を有する冠動脈疾患と診断された.虚血を有する冠動脈疾患と診断された患者では,腎症の合併,降圧薬の使用,抗血小板薬あるいは抗凝固薬の使用,脳梗塞の既往が多かった.またeGFRは有意に低く,ABI,IMTにも有意な差異を認め,石灰化スコアも高値であった.