著者
斉藤 功 青野 裕士 池辺 淑子 小澤 秀樹 山下 剛
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.257-265, 1998-11-10 (Released:2010-02-09)
参考文献数
21

わが国において, 1995年に国際疾病分類第10回修正 (International Classification ofDiseases : ICD-10) に基づいた死亡診断書の改正が行われた。その結果, 大きく変化した心疾患死亡統計について, 都道府県別の変化を検討した。1993年から1995年までの人口動態統計を用いて, 都道府県別, 性, 年齢階級別, 簡単分類別死亡数より, 25歳から74歳の心疾患死亡を抽出し, 直接法による都道府県別の年齢調整死亡率を算出した。心疾患はICD-9およびICD-10より, 慢性リウマチ性心疾患, 虚血性心疾患, 肺循環疾患およびその他の型の心疾患を原死因とするものと定義した。全心疾患の年齢調整死亡率は, 男女とも全都道府県において1993年から1995年にかけて減少した。男では47都道府県中, 31道府県, 女では39都道府県において, 1993年と比べて1995年には20~39%の範囲内で減少した。さらに, 今回の改正で最も影響を受けた心不全と虚血性心疾患の年齢調整死亡率の変化率を都道府県別にみると, 心不全はほぼ一様に男女とも60~79%の減少がみられた。また, 虚血性心疾患は全ての都道府県において死亡率の増加を認めたが, その変化率は都道府県別に広い分布を示していた。また, 全心疾患と心不全の年齢調整死亡率の変化率について関連をみたところ, 相関係数が男で0.596, 女で0.443と有意な正の相関を認めた。全ての都道府県において全心疾患の年齢調整死亡率は減少しており, その減少は心不全の大幅な減少によりもたらされていると考えられた。我々が実施してきた大分市心疾患死亡調査の成績と照らし合わせた場合に, この死亡率の減少は, およそ同程度のものであった。一方, 虚血性心疾患に関しては, 全都道府県において増加を示した。そして, 改正前後の変化率は各都道府県の変化率に大きな違いがあったが, 全国合計でみた場合は大分市心疾患死亡調査の推計値と近似していた。
著者
若井 建志 大野 良之
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.42-45, 1999-02-10 (Released:2009-10-16)
参考文献数
4

バイアスは疫学方法論における重要な問題の1つである。以下, バイアスの種類とその対策について2回にわたって述べるが, 詳細については参考文献 (1, 2, 3) を参照されたい。なお, 疫学用語については可能なかぎり参考文献 (4) に準じた。今回はバイアスとは何か, およびバイアスの種類についてである。
著者
竹森 幸一 三上 聖治 仁平 將
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器病予防学会誌 (ISSN:13466267)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.157-162, 2001-10-25 (Released:2009-10-16)
参考文献数
17

2000年に、全都道府県から抽出した195市区町村の主として老人保健事業で測定された40歳から69歳の女性9696名の血圧値を資料として、水銀血圧計については偶数の、自動血圧計については0から9の末尾の平等性を検討し、次の結果を得た。1) 水銀血圧計で測定された6560名の最高および最低血圧値は、奇数を除いた偶数の平等性はともに否定され (それぞれχ2=772、p<0.001、χ2=1855、p<0.001) 、末尾に0が多いことが示された。2) 自動血圧計で測定された2919名の最高および最低血圧値は、末尾0から9の平等性は否定された (それぞれχ2=53.4、p<0.001、χ2=72.9、p<0.001) 。最高、最低血圧値ともに末尾は奇数より偶数が多いことが示された (それぞれχ2=36.6、p<0.001、χ2=384、p<0.001) 。3) 1985年調査と2000年調査の測定値について、最高、最低血圧値の末尾0と0以外の偶数の割合を比較した結果、末尾0の割合が最高血圧が41.1%から33.7%、最低血圧が45.5%から41.4%と2000年調査の方が減少していた。血圧分類は140-159mmHg、90-99mmHgのように末尾0が境界になっていることから、測定値の末尾0の割合の違いが高血圧の有病率に影響を与えるものと考えた。
著者
樗木 晶子 長弘 千恵 金 明煥 小林 大佑 小車 莉絵子 福田 直行 中田 亜希子 香川 智啓 長家 智子
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器病予防学会誌 (ISSN:13466267)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.28-33, 2005-01-31 (Released:2009-10-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

38℃と41℃という湯温の違いが入浴時の高齢者の呼吸・循環動態へ及ぼす影響を以前報告した。この変化が高齢者に特有なものか否かを検討するため今回は12人の健常高齢者 (男性5人、女性7人、平均年齢 : 70±5歳) と12人の健常若年者 (男性6人、女性6人、平均年齢 : 23±3歳) を対象に、湯温41℃の入浴で、血圧、脈拍、pressure-rate product (収縮期血圧と心拍数の積、PRP) 、酸素飽和度、鼓膜温の変化を計測した。高齢者では収縮期血圧は入浴中有意な変化はなかったが、出浴後は若年者に比べ低下傾向が強かった。拡張期血圧は両群とも入浴中から低下し出浴後もそれが続いた。脈拍は両群とも入浴中上昇し、出浴後は入浴前より低下し、両群間に変動の差はなかった。PRPは高齢者は入浴直後に上昇したが、若年者は出浴直後に上昇し出浴後安静1時間の問に入浴前より低下した。酸素飽和度は高齢者のほうが出浴後長時間経過したときの低下がみられた。鼓膜温は若年者より高齢者の方が上昇傾向を示したが有意差は得られなかった。高齢者と若年者では入浴時の呼吸・循環動態の変化が異なることが明らかとなった。
著者
浅野 令子 鈴木 一夫
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.172-178, 1991-01-30 (Released:2009-10-15)
参考文献数
15

秋田県で扱っている既存の保健情報を解析し, 喫煙習慣, 飲酒習慣, 肥満について高血圧や脳卒中の危険因子としての評価をした。脳卒中の全ての病型で高血圧を有する人は相対危険度が有意に高い。40~70歳代全体での病型別オッズ比をみると, 男の飲酒習慣は脳出血, 喫煙習慣は脳梗塞で高い。女では飲酒, 喫煙習慣を持つ人は全ての脳卒中病型で高い。飲酒習慣と肥満は確実に血圧を上昇させる。一方, 喫煙習慣は血圧を上昇させず, 喫煙習慣を持たない人より常に低値をとった。この傾向は男女に共通してみられた。飲酒は血圧を確実に上昇させ, 脳出血やくも膜下出血には促進的に働いたと思われる。喫煙は血圧を低下させる事から脳出血に対して抑制的に働く可能性がある。一方, 脳梗塞を増大させ, さらにくも膜下出血に対してなんらかの促進的役割を果たしていると思われる。
著者
川端 輝江 古 息珠 柴田 茂男 長谷川 恭子 澤井 廣量 李 寧遠 劉 麗雲 村上 秀親 小川 久恵 矢ヶ崎 信子 松田 康子 岩間 範子
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.109-117, 1993

循環器疾患死亡率に各々特徴を持つ日本の2地区 (山梨県および沖縄県) と沖縄県に隣接している中華民国 (台湾) における計3地区に在住する中高年齢者を対象とし, 健康診断を行った。そこで, 我々はこれらの地区において, 循環器疾患の指標となりうる肥満度, 血圧, 血清脂質の諸検査結果を主成分分析法により検討した。<BR>主成分分析の結果, 得られた2次元図の各象限の特徴を表現すると, 1.高血圧型, 2.肥満, 血清中性脂肪高値, HDL-コレステロール低値型, 3.低血圧, 血清HDL-コレステロール低値型, 4.やせ, 血清中性脂肪低値, HDL-コレステロール高値型となった。<BR>男性では, 山梨県対象者は血清中性脂肪高値および肥満の者が約2割いた。沖縄県対象者では全体の3割強が高血圧型であった。台湾対象者では軽度の肥満および中性脂肪高値型と低血圧および血清HDL-コレステロール低値型が, あわせて約3割以上であった。<BR>女性では, 山梨県対象者に対して, 沖縄県対象者では血清総コレステロール, HDL-コレステロールの平均値が従来の成績同様高かったが, その他の項目においては, 極端に正常値からはずれた検査値を持つ者は少なく, 特徴的な分布はみられなかった。台湾対象者では, 肥満, 血清中性脂肪高値およびHDL-コレステロール低値型に属する人は約4割であり, 循環器疾患のリスクが高い集団と推察される。
著者
奥田 奈賀子 岡山 明 チョウドリ ソヘル・レザ 上島 弘嗣
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.124-129, 1997-10-20 (Released:2009-10-16)
参考文献数
8

循環器疾患の発症に栄養は深く関わっている。栄養と血圧の関係を明らかにするための国際共同研究 (INTERMAP) の実施にあたっては, 国際的に標準化された主要栄養素, 脂肪酸, アミノ酸, 微量栄養素に関する食品成分表が必要である。我々は, 国際比較可能な栄養データを得られる食品成分表を得ることを目的に, 24時間思いだし法の実測値を用いて日本標準食品成分表の標準化を行った。
著者
若井 建志 大野 良之
出版者
社団法人 日本循環器管理研究協議会
雑誌
日本循環器管理研究協議会雑誌 (ISSN:09147284)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.188-190, 1999-04-30 (Released:2009-10-16)
参考文献数
1

前回はバイアスとは何か, およびバイアスの種類について述べた。今回はバイアスに対する対策を考えてみたい。