著者
中野 幸紀 MOE Espen
出版者
関西学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

Espen MOE研究員が提示した「産業活動の持続的可能性に関する指摘理論分析フレームワーク」に沿って、日本の省エネルギー政策及び新エネルギー政策に関する文献調査、ヒアリング調査及び研究会を実施した。なお、本研究については当初2年間(24か月)の調査実施期間を想定していたが、Espen MOE研究員の本国ノルウェー科学技術大学に就職が決まったため平成21年12月22日までの1年と1カ月間の研究期間となった。これにより、平成21年度に計画していた研究については一部その実施が結果的にできなかった。以下、研究計画に沿って報告する。平成20年度にはEspen MOE研究員の来日を待って日本国内で実施する共同研究の具体化のために有識者との懇談を4回実施した(平成20年度実績報告書)。平成21年度前半には、風力発電システムの開発及びその社会的普及に関する調査を行った。(1)省エネルギー推進政策省エネルギー法の制定導入時に意図された政策目的を当時の担当課長、課長補佐などに電力中央研究所が過去にインタビュー調査した結果などについて、調査担当者などからヒアリング調査を行うことができた。(2)新エネルギー機器産業形成政策風力発電システムの開発普及に関して元三菱重工業風力発電システム開発担当者に7月末にインタビューを行い、風力発電電力の価格設定、既存電力系統との接続問題、電力の地域独占などの問題が日本における風力発電の社会的普及に足かせとなった時期があったことが明らかにされた。この経験から、将来のオフショア型風力発電システムの導入、スマート・グリッド導入などの政策的検討の際にもグリッド既得権の調整が大きな課題となることが予想されることが明らかとされた。本事例研究によって、MOE研究員が欧州及び米国の事例研究を通じて提示している既得権調整に関わる史的分析アプローチが日本の事例に対しても有効であることがわかった。次に、日本における太陽光発電システムの社会的普及について、同様のインタビュー調査を行うために夏休み明けから複数の企業と接触を開始したが、MOE研究員のノルウェー本国での就職が決まったことによって中断した。日本を事例とした研究成果は、MOE研究員がノルウェーに帰国後発表される予定である。平成22年度についてはMOE研究員が新たに所属することとなったノルウェー科学技術大学のプロジェクト研究として継続される予定である。