著者
鈴木 敏之 奥田 綾子 中川 恭子 中野 康弘 楢崎 陽香
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.14-20, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
17

上部気道炎とホルネル症候群の徴候を示す18ヶ月齢の猫が来院した。内科的治療に効果を示さなかったので、CT検査を実施した結果、右鼓室胞と鼻咽頭部に軟部組織塊を確認した。全身麻酔下で軟口蓋切開によりアプローチして、耳管咽頭口から鼻咽頭部に出ているポリープを除去したところ、呼吸障害は改善したが神経徴候は持続した。その1ヶ月後、MRI検査所見に基づいて、腹側鼓室胞切除術により右鼓室胞内に充満する炎症組織を除去したところ、術後に臨床症状の悪化も認められず、神経徴候はほぼ改善した。2回の手術で摘出した組織は、組織学的に炎症性ポリープと診断された。本症例の経過から、猫では鼓室胞と鼻咽頭の炎症性ポリープによって上部気道障害とホルネル症候群が生じることあり、その治療として両部位の病巣切除が必要になりうることが示唆された。手術から16ヶ月後に鼻咽頭部から採取した検体のPCR検査ではMycoplasma felisが陽性であったが、この感染が鼻咽頭ポリープの原因であるとの結論には至らなかった。
著者
村上 善彦 中野 康弘 加藤 太司 中川 恭子 南 毅生
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.36-40, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

前縦隔に異所性甲状腺癌が発生した犬に外科手術を行った3例を経験した。3症例はCT検査を行い、他臓器への浸潤、転移、胸水を認めなかったため、細胞診、病理組織検査後、外科手術を行った。術後、症例1、3はそれぞれ1,050、1,420日経過しているが、再発転移なく良好に経過している。また、症例2は術後2,925日に腫瘍とは関連なく死亡した。症例の集積による検討が必要ではあるが、前縦隔に発生した異所性甲状腺癌は、他臓器に浸潤や転移がない場合、外科手術を行うことで良好な予後が得られる可能性が考えられた。
著者
工藤 徹也 中野 康弘 南 毅生
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-18, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
8

6歳、去勢雄、体重2.0 kgのヨークシャーテリアが進行性に悪化する吸気性喘鳴を主訴に紹介来院した。頸部レントゲン検査では咽頭および喉頭に軟部組織デンシティの腫瘤陰影が認められた。口腔および喉頭検査では腫瘤性病変により喉頭を確認することはできず、気管切開チューブを使用して麻酔維持を行った。CT検査では咽頭および喉頭にそれぞれ独立した軟部組織性腫瘤を認め、咽頭部腫瘤は病理組織検査で横紋筋肉腫と診断された。気道の確保のために永久気管開口術を行い、腫瘍に対しては緩和的放射線治療を実施した。放射線治療後に腫瘍は縮小し、臨床症状は改善したが、術後26ヶ月で再度呼吸困難が認められた。CT検査では咽頭の腫瘍は消失していたが、喉頭の腫瘍が拡大していたため、2クール目の放射線治療を実施した。2クール目の放射線治療後に再度腫瘍は縮小し、臨床症状も改善した。術後35ヶ月で実施したCT検査では咽頭および喉頭の腫瘍は共に消失していた。術後40ヶ月に至る現在も、臨床症状はなく、良好に経過している。犬の咽頭および喉頭に発生する横紋筋肉腫は、遠隔転移しづらく、放射線治療に感受性がある可能性があり、今後も症例を重ねて情報を蓄積する必要がある。