著者
工藤 徹也 中野 康弘 南 毅生
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.13-18, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
8

6歳、去勢雄、体重2.0 kgのヨークシャーテリアが進行性に悪化する吸気性喘鳴を主訴に紹介来院した。頸部レントゲン検査では咽頭および喉頭に軟部組織デンシティの腫瘤陰影が認められた。口腔および喉頭検査では腫瘤性病変により喉頭を確認することはできず、気管切開チューブを使用して麻酔維持を行った。CT検査では咽頭および喉頭にそれぞれ独立した軟部組織性腫瘤を認め、咽頭部腫瘤は病理組織検査で横紋筋肉腫と診断された。気道の確保のために永久気管開口術を行い、腫瘍に対しては緩和的放射線治療を実施した。放射線治療後に腫瘍は縮小し、臨床症状は改善したが、術後26ヶ月で再度呼吸困難が認められた。CT検査では咽頭の腫瘍は消失していたが、喉頭の腫瘍が拡大していたため、2クール目の放射線治療を実施した。2クール目の放射線治療後に再度腫瘍は縮小し、臨床症状も改善した。術後35ヶ月で実施したCT検査では咽頭および喉頭の腫瘍は共に消失していた。術後40ヶ月に至る現在も、臨床症状はなく、良好に経過している。犬の咽頭および喉頭に発生する横紋筋肉腫は、遠隔転移しづらく、放射線治療に感受性がある可能性があり、今後も症例を重ねて情報を蓄積する必要がある。