著者
中野 道彦
出版者
静岡県工業技術研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

イムノクロマト法は、簡便であるにもかかわらず、特異性が高く正確な検出方法である。そのことからベッドサイド診断に適した方法として、近年、重要性が高まっている。一般に、イムノクロマト法は、抗原-抗体反応に伴って反応試験紙上の特定の場所に金コロイドが集積し、その集積による赤紫色の呈色を目視で判断する。このとき、目視可能な呈色は、試験片のごく表層に集積した金コロイドのみを反映しているに過ぎないため、厚み方向の集積量を判断に生かすことができていないといえる。そこで、厚み方向全体にわたる金コロイドの集積を計測することで、イムノクロマト法を高感度化することを試みた。模擬試料として、C反応性タンパク質(CRP)を検出するイムノクロマト法キットを用いた。金コロイドを測定するために、試験紙上の金コロイド集積部を上下から挟み込むようにして設置する電極を作製した。異なる濃度のCRP溶液をそれぞれキットに添加したあと、金コロイド集積部を、作製した電極で挟み、その電極間の静電容量を測定した。対照実験として、金コロイドの集積を反射光強度で測定する光学測定器でも同様に測定した。その結果、反射光強度の場合は、測定下限がCRP量0.5ngであったのに対し、今回作製した電極では、0.1ngであった。反射光強度測定は目視と同程度であるため、今回作製した電極を用いることで、目視よりも高感度に測定できるようになったといえる。一方で、金コロイドの集積を測定する新しい方法として、微小電極の使用についても試みた。ガラス基板上に微小電極(電極間距離:約30μm)を作製し、その電極間に金コロイドを集積させて、電気抵抗および静電容量を測定した。金コロイド溶液を純水で希釈して、その希釈率に応じた電気抵抗/静電容量を測定したところ、いずれの値も金コロイドの希釈率に依存して変化した。