著者
中野 雅史 佐藤 整尚 高橋 明彦 高橋 聡一郎
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.2-30, 2017-01-01 (Released:2022-01-25)
参考文献数
32

本稿では,粒子フィルタを活用したポートフォリオ構築の新しい手法を提案する.特に,モンテカルロ・フィルタに基づく資産の期待リターンとボラティリティの推定により,平均分散ポートフォリオのパフォーマンスが飛躍的に向上することを示す. 我々は,状態空間モデルの枠組みにおいて,非対称性を持つボラティリティに加え,期待リターンに関する状態変数も確率過程として取り込むことにより,ボラティリティの時間変化と整合的なリターンを予測する.その結果,一般的な移動平均・分散に基づく平均分散ポートフォリオのみならず,等ウェイト(Equal Weight),最小分散,リスクパリティ(Risk Parity)などのリターン予測に依拠しない手法を凌駕する運用成果が実現可能なことを明らかにする. また,投資対象としては,国内外の株式・債券に加えリート(REIT)を組み入れ,空売り禁止条項や取引費用,投資比率制約も考慮することで,より現実的な国際分散投資を考察する.さらに,ポートフォリオのパフォーマンス指標として,複利リターンやシャープ・レシオに加え,実務的には重要な指標であるソルティノ・レシオや最大ドローダウンも採用し,多角的に評価することにより,我々の提案する手法の有効性及び頑健性を確認する.