著者
中野渡 一耕
出版者
九州大学基幹教育院
雑誌
鷹・鷹場・環境研究 (ISSN:24328502)
巻号頁・発行日
no.4, pp.17-34, 2020-03-20

小稿は、盛岡藩三戸代官所(現青森県三戸町)の役人の留書から、同藩における巣鷹捕獲の実態について分析するものである。巣鷹とは、巣立ち前のタカ類の幼鳥のことで、鷹狩り用に調教するため捕獲された。盛岡藩では巣鷹を捕獲する専門の役職「巣鷹御用懸」が、藩内4か所の代官所に置かれた。巣鷹の見回りや捕獲は、巣鷹御用懸や実際に捕獲する専門の百姓のほか、肝入(村の責任者)・山守など多くの村人が動員される一大作業だった。また藩庁の指示により、捕獲の要・不要ががけ判断され、また営巣(巣懸)・孵化(貝割)・巣下げの度に代官や用人に報告させるなど、厳格な管理体制が敷かれていた。藩の権力を背最にした鷹の権威の大きさが見て取れるとともに、藩の方針に振り回される現場の様子も垣間見え、藩政と地域の結節点にあった代官所役人の業務の特性が現れている。また、巣鷹御用懸の職制と関連して、これまであまり分析されていなかった、盛岡藩の鷹匠組織や鷹の捕獲体制についても触れる。