著者
冨田 義人 石井 克幸 丸尾 健二 井上 哲男 村上 隆彦
出版者
神戸商船大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1.全空間における非線形楕円型方程式(*)F(x,u,Du,D^2u)=0 in R^nの粘性解が一意に存在するための解のクラスをFの構造と関連させて決定した.主結果を粗く述べると、F(x,u,p,X)がpに関してm(m≧1)次の多項式、xに関してμ(μ≧1)次の多項式のようなふるまいをし、mとμとの間に1<μ<m/(m-1)が成立するならば、(*)は一意的な粘性解をもつ(この結果はAdv.in Math.Sci.and Appl.Vol.2に公表された).今後の課題はmとμとの関係が最良であるか吟味することである.2.交付申請書の実施計画に沿って、粘性解を扱うことの利点を示す偏微分方程式を考察した.領域の内部で退化が起こるDirichlet問題(**)-LAMBDA(x)Δu(x)+c(x)u(x)=f(x)in B={xεR^n;|×|<L}、u=β on |×|Lを考える.ここで、L>1,N≧2,LAMBDA(x)=(1-|×|)^λ(|×|<1のとき);=(|×|-1)^λ(1<|×|<Lのとき)である.|×|=1の球面上で方程式は退化していることを注意したい.この問題に対して、(1)c(x),f(x)がradialな関数で、0<λ<2を仮定するとき、(**)は|×|=1の球面上で u(x)=f(x)/c(x)をみたすradialな粘性解をもつ.(2)0<λ<1ならば、(**)は最大解および最小解をもち、かつ、これらの間に無数の粘性解が存在する.(3)1≦λ<2ならば、(**)は一意的にradialな粘性解をもつなどを証明した.これらの結果については投稿中である。今後の課題はradialでないc(x),f(x)および非線形を扱うことである.3.石井は主として、衝撃制御問題、ジャンプを伴う確率制御問題および確率微分ゲーム問題などから導かれる非線形楕円型偏微分方程式に対する粘性解の一意性と存在を考察した.