著者
丸山 恵美子
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.57-69, 2004-09-30

G.ヴェルディのオペラ《トロヴァトーレ》と《運命の力》に登場するレオノーラは、名前だけでなく、共通する部分が多い。二人とも身分の高いスペイン貴族、美しく清純で年の頃は20歳前後、信仰深いが一途で情熱的な女性、そしてどちらもアウトサイダー(ジプシー、インディオの末裔)を愛している。しかし歌の内容からは異なるところが多く、それぞれ別の歌唱表現が求められる。《トロヴァトーレ》のレオノーラには華麗なテクニックとともに情熱的で迫力のある声が、《運命の力》のレオノーラにはいっそうの重厚さと悲劇性が必要となる。そして両者いずれもが、「ヴェルディの声」、すなわちベルカントからさらにドラマティックな表現の可能な声で情熱的な人物像を描き出し、観客に感動を与えることが肝要となるのである。