著者
中村 拓人 徳田 裕 菱田 実 塚本 彰 丸箸 兆延 鳥畠 康充 糸川 秀人
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.17, 2010 (Released:2010-11-02)

【背景】日本整形外科学会の静脈血栓塞栓症予防ガイドラインでは,長時間の車椅子座位保持は,静脈血流の低下から下肢深部静脈血栓症(以下,DVT)の可能性があり,予防として定期的に歩行,立ち上がり等を行う必要があるとしている.しかし血流低下の明確な根拠と何分,何時間ごとに予防運動を行うべきかについては明確な記載はない.【目的】車椅子座位保持が,下肢深部静脈血流速度(以下,血流速度)を低下させるか検証し,保持時間が血流速度に及ぼす影響ついて明らかにすることとした.【対象】内科的,運動器的に機能障害のない健常成人12名(性別:男性9名,女性3名).年齢21.8±2.8歳,身長168.5±9.6cm,体重67.8±16.9kg.【方法】対象血管は左側ヒラメ静脈とし,15分間安静にした腹臥位時の血流速度,車椅子移乗5,10,15,20分後の血流速度を,それぞれ超音波診断装置使用し,パルスドップラーモードにて測定した.血管径に変化が生じないよう,ゲル層を厚くし皮膚に直接プローブが接触しないように配慮した.統計処理は腹臥位との比較に多重比較検定を用い,危険率5%未満を有意水準とした.【結果】腹臥位時血流速度3.9±1.1m/secに比べて,5分後3.1±0.9m/secでは有意差を認めず,10分後2.5±0.6m/sec,15分後2.1±0.7m/sec,20分後1.7±1.6m/secで有意差を認めた(P<0.01).【考察】臥位時に比べて車椅子座位保持は,血流速度が低下することが示され,DVT発症リスクがあることが示唆された.また約10分間以上の保持で血流速度が有意に低下することが示され,最低限10分間ごとにはDVT予防のため対応が必要であると考えられた.このDVT予防方法に関して,カフパンピングや立ち上がり等の運動種別,運動回数,運動速度など,今後更に検討していく必要があると考える.
著者
笹谷 勇太 中村 拓人 塚本 彰 糸川 秀人 丸箸 兆延
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第26回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.70, 2010 (Released:2010-11-02)

【はじめに】腓骨筋腱脱臼は、足関節背屈および外反が強制された場合に受傷するとされる。今回、足関節外反となるダイナミックアライメント(以下、DA)の改善を図るとともに、足関節外反となる要因にも着目して理学療法(以下、PT)を実施したため、考察を加えて報告する。【症例紹介】16歳女性。バレーボール歴7年。ポジションはセッター。2009年12月初旬、トスをあげようとしゃがみ込み、右足関節外反位にて伸びあがろうと底屈した際に腓骨筋腱脱臼を受傷。2010年2月9日にDas de法を施行。術後3週でギプスカットし、エバーステップ装着にて全荷重を開始。その後、競技復帰を目的に週1回の外来PTを開始。既往歴として、両足関節内反捻挫の反復がある。【PT初期評価】立位時、両側ともに踵骨回内位。スクワッティングテストでは、両脚ともに踵骨回内が起こり、Knee inが出現。振り向きテストでは、踵骨保持が困難であり、外側荷重に不安感を訴えた。【PT経過】術後5週からclosed kinetic chainでの運動を開始し、足関節だけでなく複合関節の連動による足関節内外反の制御を目指した。まず意識下において足関節内外反を制御したDAでのステップ動作などから開始し、動作の習得とともに、ジャンプやボールを用いての実際の競技動作に近い練習へと進めた。また、足関節内外反を制御するためのテーピング指導も行い、術後20週で競技に復帰した。【考察】本症例が受傷に至った要因として、内反捻挫の反復により外側支持機構のひとつである腓骨筋支帯の脆弱化があったこと、足部外側不安定性から踵骨回内位での競技動作であったことが考えられた。競技復帰のためには、回内位でのDAを修正する必要があったが、過度の矯正は内反捻挫を惹起する可能性があった。よってPT実施上、足関節内外反を制御したDAを獲得させることが再発・二次的障害予防のために必要であったと考えられた。