著者
越智 康雄 森川 日出貴 丸茂 文幸 野崎 浩司
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1053, pp.229-235, 1983-05-01
被引用文献数
1 6

希土類を層間に含む一連のメリライト型化合物Ln<sub>2</sub>GeBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> (Ln=Y, La, Pr, Sm, Gd, Dy, Er) を合成した. 粉末X線回折図形から, これらの化合物はすべてメリライトと同形であり, 空間群P42<sub>1</sub><i>m</i>に属することが明らかとなった. Cu Kα線を用いて粉末X線回折図形の強度をステップ走査法 (15°≦2θ≦100°, ステップ幅: 0.05°) で測定し, プロファイル解析法によりこれらの化合物の結晶構造を解析した. <i>c</i>軸の長さは層間にある希土類イオンのランタノイド収縮に対応して短くなる. また<i>a</i>軸の長さもランタノイド収縮に対応してBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 4面体グループが小さくなるために短くなる. 本研究で解析したメリライト型化合物の層間の8配位席は他の同形化合物と比べてひずみが小さい. 希土類を含む化合物は低温で特徴的な磁性を示すことが多いが, これらの化合物は4.8Kまで磁気相転移を示さなかった.
著者
丸茂 文幸
出版者
東京工業大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

岩石学上重要な系である【F_0】(クドカンラン石)-Di(透輝石)-An(灰長石)-Si【O_2】系に少量のTi、Cr等岩石中にも少量含まれている遷移金属元素を加えた時に生ずる相平衡関係の変化及びこれ等の微量成分元素の構造化学的役割りについての正確な知見を得ることはマグマの発生あるいはその後の進化を知る上で極めて重要である。本年度はまず、上記の部分系である【F_0】-An-Di系に【Cr_2】【O_3】を加えて、液相面上での相平衡関係を調べた。Cr量が増加するとスピネルが晶出する領域が広がり【Cr_2】【O_3】約0.2wt%のとき、透輝石、灰長石、スピネル及び液が共存する不変点を生ずる。【Cr_2】【O_3】量が0.2wt%以下のときは灰長石とカンラン石が共存し得るが、0.2wt%以上になると、両者は共存し得ない。また【F_0】-An-Si【O_2】系に【Cr_2】【O_3】を加えた場合もスピネルの初晶領域が著しく拡大し、灰長石の領域が極端に減少する。その結果、従来は熱力学的に越えることができないと考えられていた組成中の壁を、0.2wt%程度の【Cr_2】【O_3】が存在する場合には越えることが可能となることが明らかにされた。この結果はマグマの分化を考える上で重要である。珪酸塩融体の構造と晶出する結晶の関係を明らかにする目的で、An-Di系及びこれに【Cr_2】【O_3】を加えた系の熔融体を急冷して作成したガラスの構造をX線回折法により調べた。【An_(50)】【Di_(50)】組成のガラス中ではSi及びAlは総てO原子による四面体配位をとるが、【Cr_2】【O_3】を5wt%加えたガラスでは、可成りの割合のAlが6配位をとるという結果を得た。スピネル中でAlが6配位であることと考え合せて興味深い。また熔融法によるガラスの構造と比較する目的で、衝撃圧縮による灰長石ガラスの構造を調べた。衝撃圧縮ガラスにおいてもSi及びAlは熔融ガラス中と同様、四面体配位をもつが、Caの配位の不規則性が増している。上記の他、β-【Mg_2】Si【O_4】の構造、テクト珪酸塩中のSi及びAlの配列に関する研究も行った。