- 著者
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青木 清
- 出版者
- 上智大学
- 雑誌
- 特定研究
- 巻号頁・発行日
- 1987
魚類の中枢神経系は, 他の脊椎動物と比較して単純で神経生理学的な面からの解析に適していると考えられるところから, 日本産ウグイとメダカを用いて視覚性眼振運動(Optokinetic nystagmus:OKN)を制御する中枢神経機構について, 電気生理学的, 行動生理学的に解析した.1.自発性眼球運動と, 白黒の縦縞模様のスクリーンの回転によって誘発される2種類のOKNにおける, ウグイの動眼神経核内での単一ニューロン活動を記録して, その活動様式を調べた. 白黒の縦縞のスクリーンを, 時計方向に回転させた時反応した41個のニューロンは, 水平面上の眼球運動をおこすとともに, 3つの活動様式を示した. その三つの様式は, (1)魚の鼻側方向の急速眼球運動時に高頻度発射するタイプ, (2)(1)とは反応タイブが似てはいるが, 急速眼球運動時に限って特異的に高頻度を示すバーストタイプ, (3)通常は眼球の位置に関係のないある一定の頻度で発射していて, 急速眼球運動の間だけ活動が休止するボーズタイプである. これら(1)(2)(3)のニューロンでは, サッケード(自発性眼球運動, における急速運動)と視運動性眼振の急速相との間には, ニューロン活動に違いが見られなかった.2.OKNに直接関与する運動系の神経系を明らかにする為に, ウグイの脳の視床-前視蓋領域に局所的電気刺激を与えて, 視覚からの入力のある時と同じOKNを発現させ, その機能的役割について調べた. 両側の視床-前視蓋領域のうち右側領域を電気刺激すると常に引き起される眼振は時計回転方向のものであり, 左側領域では反時計回転方向となった. 視床-前視蓋領域の部位では, 終脳核群と互いに連絡があり対象同定に関与している.3.野生型ヒメダカの孵化直後から成魚までの視運動反応の発達を調べ, 発達に変化のみられる日令に従って中枢神経系の発達を電気生理学的に解析して制御機能を明らかにした.