著者
佐藤 孝則 丹後 輝人 芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.149-157, 1981-05-15

繁殖に関する研究のなかで,現在あまり知られていないエゾシカの分娩生態について調査を行った。分娩の徴候として観察された外観の変化と行動は,腹部の下垂,乳房の肥大,外陰部の腫張と弛緩,尾の上げ下げ,速歩行動,呻き声,著しい威嚇であった。また1日あたりの脱糞と排尿の頻度は,分娩が近づくにしたがって増加を示し,特に分娩の前日で一番高い値を示した。分娩の順序は以下のとおりで,娩出陣痛,羊膜の突出と破裂,胎児の前肢と頭頸部の出現,出産,臍帯の摂取,後陣痛,粘液の流出,後産の排出と摂取とつづいた。3頭の雌ジカは林に隣接する牧草地内で出産を完了した。出産するとすぐ母ジカは新生児を絶えまなく,かつ力強くなめ始めた。新生児の最初の動きは頭部を振ることであった。