著者
丹羽 はじめ
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4-6, pp.193-200, 1955-12-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
14

1. 野生メダカの成熟した雄は生殖期になると尾鰭の背腹縁部が橙色に色づき, 鰭条間に数条の黒色の筋と腹鰭に多数の黒点を現すようになる。この特徴は婚姻色と見なすことができ, 黒色色素胞と黄色色素胞の増加によつてもたらされる。雌は婚姻色を現さない。2. 雄のこれらの色素胞は去勢によつて減少し, 肉眼的にも婚姻色は消失する。雌の色素胞は去勢による変化を示さない。3. 卵巣摘出雌と正常雌に対するメチル・テストステロンの投与は人工的な婚姻色を発現させることができる。すなわち, これらの雌の尾鰭と腹鰭の色素胞は正常雄と同程度まで増加する。4. 精巣の移植によつても正常雌に人工的に婚姻色を誘発することができる。5. 野生メダカの婚姻色は生殖期における精巣ホルモンの盛んな分泌によつて雄のみに発現され, 雌では卵巣の影響を受けない。