著者
丹羽 充
出版者
日本南アジア学会
雑誌
南アジア研究 (ISSN:09155643)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.33, pp.37-64, 2022-03-30 (Released:2022-05-03)
参考文献数
54

今日のネパールでは、世俗主義国家化への反発として、ヒンドゥー・ナショナリストの活動が顕在化するようになっている。本稿では、数あるヒンドゥー・ナショナリスト団体の中でも圧倒的に長い歴史と歴代の国王との関係を有する世界ヒンドゥー連盟に着目する。具体的には、世界ヒンドゥー連盟が2016年に開催した国際ヒンドゥー大会議の記念書籍たる『ダルマ』を主たる資料として、それが打ち出すのが「包含的ヒンドゥー・ナショナリズム」であることを示す。その上で本稿の続く部分では、それに対する多様な応答について主に聞き取り調査の結果に基づいて検討する。世界ヒンドゥー連盟の主張は、しばしば、そもそも関心を抱かれなかったり、抱かれたとしてもの厳しい批判の対象とされたりする。それでも世界ヒンドゥー連盟は、ヒンドゥー教徒以外の賛同者をたしかに獲得しており、宗教をまたいだネットワークを形成し始めていること示す。