著者
久保 寿夫
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.119, no.8, pp.1097-1104, 2016-08-20 (Released:2016-09-08)
参考文献数
14

G-CSF 適正使用ガイドライン (2013年版) は, 医師, 看護師, 薬剤師などの医療スタッフが, 化学療法や放射線療法による好中球減少症に対して顆粒球コロニー刺激因子 (granulocyte-colony stimulating factor: G-CSF) を使用する際の参考となり, その適切な使用により患者に生存期間の延長や, 生活の質 (Quality of Life: QOL) の向上がもたらされることを目指して作成された. G-CSF は発熱性好中球減少症 (febrile neutropenia: FN) の予防および治療において用いられ, その投与法は「一次予防的投与」, 「二次予防的投与」, 「治療的投与」の3つに大別される. 「一次予防的投与」とは, 抗がん薬治療の1コース目から FN を予防する目的で, 好中球減少や発熱を確認することなく G-CSF を投与することを指す. ガイドラインでは, FN の発症率が20%を超える高リスクのレジメンにおいて一次予防的投与が推奨され (推奨グレード A), FN 発症率が10~20%のレジメンでは, FN 発症または重症化のリスクが高いと考えられる因子を持つ患者においてのみ考慮すべきとしている (推奨グレードB). 「二次予防的投与」は前コースで FN を生じた場合, 次コースにおいて予防的に G-CSF を投与することを指す. リンパ腫や胚細胞腫瘍など化学療法により「治癒」を含む十分な効果が期待でき, 治療強度を下げない方がいいと考えられる疾患においては, 二次予防的投与を考慮すべき (推奨グレード B) であるが, 緩和的化学療法の場合は次コースの投与量減量もしくはスケジュール変更を検討することが原則である. 「治療的投与」は好中球減少症を生じた時に G-CSF を投与することであり, 無熱性好中球減少症に対しては, 有効性を示すデータが不十分であり推奨されない. FN 患者における治療的 G-CSF 投与についても, ルーチンに G-CSF の治療的投与を行うのではなく, 高リスクの場合に G-CSF の治療的投与を検討するべきとしている (推奨グレード C1). 2014年9月にペグフィルグラスチムが承認されたこともあり, G-CSF 適正使用ガイドライン (2013年版 Ver.2) が発表された. 本稿では Ves.2 の内容をもとにペグフィルグラスチム, バイオシミラーについても併せて概説する.