著者
佐井 佳世 久保 尚士 櫻井 克宣 玉森 豊 前田 清
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1339-1343, 2021 (Released:2022-01-31)
参考文献数
8

症例は86歳の男性.心窩部不快感を主訴に近医を受診し,内視鏡検査で胃角部小彎に3型進行胃癌を指摘され,当院を受診した.諸検査で,cT3N2M0 Stage IIIと診断し,手術の方針とした.術中所見では肝門部リンパ節,総肝動脈リンパ節,左胃動脈リンパ節が累々と腫大しており,根治的切除を断念し,胃切除のみを行った.術後にTS-1を開始するも,術後10カ月目のCTで転移リンパ節の増大を認め,ラムシルマブ併用パクリタキセル療法に変更したが,リンパ節は縮小せず,術後19カ月目よりニボルマブの投与を開始した.術後22カ月目のCTでリンパ節腫大は消失したが,ニボルマブによる下垂体機能低下症が出現し,投与を中止した.術後40カ月現在,再発なく生存中である.転移再発胃癌に対するニボルマブの奏効率は11%程度と報告され,中でも完全奏効は極めて稀である.今回,ニボルマブを投与し完全奏効を得て長期生存中の切除不能進行胃癌を経験したので報告する.