著者
山本 澄治 橋本 好平 久保 雅俊 宇高 徹総
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.955-960, 2015-11-30 (Released:2016-03-02)
参考文献数
18

近年,コーラによる胃石の溶解が報告されるようになり治療に応用され始めている。今回,コーラ飲用による溶解が誘因と考えられる,柿胃石による小腸イレウスを2度発症した症例を経験したので報告する。症例は82歳の男性で,3日前より嘔気を自覚し腹痛も認められたため受診した。CTにて食餌性イレウスの診断となり,保存的治療による改善がみられず腸管切除により異物を摘出した。しかし退院20日後に再度食餌性イレウスを発症し,再度腸管切除により異物を摘出した。2回とも先進部に線維性の塊が認められた。胃石の落下を疑いCT画像を再確認したところ,初回時の胃内に2回目の嵌頓物と同様の塊が存在した。胃石を疑った詳細な問診で,5ヵ月前に柿の食事歴があり,悪臭のある口臭が持続するため,初回入院の5日前に初めてコーラを飲用したことが判明した。このことから柿胃石がコーラにより溶解し,腸管内へ異時性に落ち込んだものと考えられた。
著者
大谷 弘樹 岡田 真典 小林 成行 久保 雅俊 宇高 徹総 白川 和豊
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.843-846, 2010-09-30 (Released:2010-11-09)
参考文献数
13

症例は,75歳,女性。約30年前に胆石症にて開腹手術を施行。約20年前より腹壁瘢痕ヘルニアがみられていたが放置しており,徐々に巨大化していった。数年前頃から食後に嘔吐をくりかえしていたが,今回は症状の改善がみられずイレウスと診断され当院紹介入院となった。来院時,BMI 37.3kg/m2と高度肥満であり,腹部には巨大な腹壁ヘルニアを認めた。腹部CT検査では,12×12cm大のヘルニア門がみられ,拡張した胃や小腸の大半がヘルニア嚢内に脱出していた。保存的治療にてイレウスが改善した後,Composix Kugel Patch XLを用いて腹壁瘢痕ヘルニア根治術を施行した。術後は集中治療を行い腹部コンパートメント症候群による呼吸機能障害や循環器障害などを発症することなく良好に経過した。