著者
宇高 徹総 山本 澄治 中村 哲也 黒川 浩典 宮谷 克也
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.738-742, 2016 (Released:2017-10-30)
参考文献数
9

1990年1月から2013年12月までに当院で切除した原発性虫垂癌13例について臨床病理学的特徴,術前・術中診断,術式,化学療法,転帰について検討した.男性6例,女性7例で,平均年齢は73.4歳(56~94歳)であった.術前診断で虫垂癌の確定診断が得られたのは1例のみで,術中にあらたに6例に診断ができ,残りの6例は術後の病理で診断できた.術式は結腸右半切除術5例,回盲部切除術6例,盲腸部分切除術1例,虫垂切除術1例であった.組織型は高分化型腺癌9例,中分化型腺癌3例,乳頭腺癌1例で,深達度はT2が1例.T3が5例,T4が7例,進行度はStage Ⅱが6例,Stage Ⅲaが4例,Stage Ⅲbが1例,Stage Ⅳが2例であった.術後観察期間中央値は43カ月(2~169カ月),転帰は無再発生存5例,無再発他病死3例,腹膜播種による原癌死3例,肝転移による原病死が1例,切除断端再発よる原病死が1例であった.累積5年生存率は51.9%であった.手術時にはすでに進行しており腹膜播種再発の頻度が高い傾向があるため,術後化学療法などの集学的治療が重要と思われた.
著者
森山 重治 宇高 徹総 宮出 喜生 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.80-86, 1994-01-15

症例は55歳,女性.咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に近医で胸部異常陰影を指摘された.画像診断上前縦隔に腫瘍を認め,穿刺針生検で線維性胸膜中皮腫の診断を得た.24ヵ月前の検診時の胸部X線で右上縦隔に約3cm大の腫瘤を認めた.1992年4月22日胸骨正中切開で開胸.右縦隔胸膜と心嚢に強固に癒着しており,これを剥離して腫瘤を摘出した.腫瘤は重量545g,大きさ12.8×10.0×7.3cmで心嚢に癒着した部位に被膜欠損を認め,右腕頭静脈付近に一致する部位に茎が存在した.病理学的に腫瘍細胞に悪性所見は見られなかった.術後前縦隔に急速に再発し,同年7月15日再手術を施行した.腫瘤は心嚢内腔に浸潤しており,心嚢を合併切除した.再発腫瘤は重量160g,大きさ9.0×7.0×5.0cmであった.患者は再手術後約3ヵ月で心嚢内に腫瘤を形成し,心タンポナーデのため死亡した.縦隔内に有茎性に発育し,急速に増大発育した稀な症例であった.
著者
山本 澄治 橋本 好平 久保 雅俊 宇高 徹総
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.955-960, 2015-11-30 (Released:2016-03-02)
参考文献数
18

近年,コーラによる胃石の溶解が報告されるようになり治療に応用され始めている。今回,コーラ飲用による溶解が誘因と考えられる,柿胃石による小腸イレウスを2度発症した症例を経験したので報告する。症例は82歳の男性で,3日前より嘔気を自覚し腹痛も認められたため受診した。CTにて食餌性イレウスの診断となり,保存的治療による改善がみられず腸管切除により異物を摘出した。しかし退院20日後に再度食餌性イレウスを発症し,再度腸管切除により異物を摘出した。2回とも先進部に線維性の塊が認められた。胃石の落下を疑いCT画像を再確認したところ,初回時の胃内に2回目の嵌頓物と同様の塊が存在した。胃石を疑った詳細な問診で,5ヵ月前に柿の食事歴があり,悪臭のある口臭が持続するため,初回入院の5日前に初めてコーラを飲用したことが判明した。このことから柿胃石がコーラにより溶解し,腸管内へ異時性に落ち込んだものと考えられた。
著者
大谷 弘樹 岡田 真典 小林 成行 久保 雅俊 宇高 徹総 白川 和豊
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.843-846, 2010-09-30 (Released:2010-11-09)
参考文献数
13

症例は,75歳,女性。約30年前に胆石症にて開腹手術を施行。約20年前より腹壁瘢痕ヘルニアがみられていたが放置しており,徐々に巨大化していった。数年前頃から食後に嘔吐をくりかえしていたが,今回は症状の改善がみられずイレウスと診断され当院紹介入院となった。来院時,BMI 37.3kg/m2と高度肥満であり,腹部には巨大な腹壁ヘルニアを認めた。腹部CT検査では,12×12cm大のヘルニア門がみられ,拡張した胃や小腸の大半がヘルニア嚢内に脱出していた。保存的治療にてイレウスが改善した後,Composix Kugel Patch XLを用いて腹壁瘢痕ヘルニア根治術を施行した。術後は集中治療を行い腹部コンパートメント症候群による呼吸機能障害や循環器障害などを発症することなく良好に経過した。
著者
岡谷 泰治 宇高 徹総 高木 章司 永廣 格 三竿 貴彦 山中 正康 青江 基 岡部 和倫 伊達 洋至 安藤 陽夫 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.870-874, 1995-11-15
参考文献数
10
被引用文献数
5

成熟型奇形腫は時に隣接臓器に穿孔を来すことが知られており,その発生頻度は36%に及ぶと報告されている.今回我々は,胸部単純X線写真で急速な腫瘤陰影の拡大を認め,術後に肺への穿孔が確認された縦隔成熟型奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は12歳の女児で1993年5月20日頃より肺炎様症状を認め,6月12日に突然の前胸部痛,激しい咳嗽および発熱が出現し近医に入院した.6月17日に当科に入院するまでの5日間に胸部単純X線写真上で腫瘤陰影の明らかな拡大を認めた.精査の結果,縦隔奇形腫と診断して,6月21日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は前縦隔右側にあり,右肺上葉の一部と強固に癒着していたため右肺上葉の一部の合併切除を要した.病理組織検査で腫瘍と癒着していた肺内には膿瘍の形成を認め,肺穿孔を伴った成熟型奇形腫と診断された.