著者
久保山 昭 松崎 早苗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1973, no.12, pp.2249-2252, 1973

77 Kにおいて,各種の結晶性溶液中で測定したアセナフテンキノソのリソ光スペク5ルは,いずれもその短い寿命(12~16ミリ秒),振動構造および溶媒効果に基づいて,π nスペクトルに帰属された。n-パラフィン中では,鋭いリン光バンドが観測された。 n-ヘキサンの場合は,たがいに接近した二つのリン光スペクトル(両者の間隔は約180 cm-i)が観測されたが,一方, n-ヘプタンの場合は,n-ヘキサンの場合の短波長のスペクトルに相当するスペクトルのみが観測された。このことから,Shpo1'skii効果の規則にしたがって,短波長と長波長のスペクトルはそれぞれ, n-ヘキサン結晶中で,その同称軸をn-ヘキサン分子の平面ジグザグ形の長軸方向に平行および垂直にして配位したアセナフテンキノン分子によるものと考えられるeジオキサンと四塩化炭素中のリソ光スペクトルは,アセナフテソキノソと溶媒間の強い電荷移動相互作用(四塩化炭素はO-アクセプターとなる)により,n-パラフィン中のそれにくらべて大きくブルーシフト(それぞれ約1100および700cm-目)し,かつ,幅が広い。